特集1 次世代に求められるゴムの分析・解析技術 熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計と専用マススペクトルライブラリを用いたポリマーの組成、添加剤の簡便解析

2021年03月02日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 次世代に求められるゴムの分析・解析技術

熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計と専用マススペクトルライブラリを用いたポリマーの組成、添加剤の簡便解析

㈱島津製作所 工藤恭彦

1.はじめに

 プラスチックやゴムなどのポリマー材料は用途に応じて様々な種類が製造されており、電機電子機器の部品、食品容器、玩具など幅広い分野で利用されている。ポリマーはその組成 (分子構造、ポリマー鎖の末端構造など) の違いにより物性や特性が変化するため、組成の解析は材料の選定や特性の把握のためにも重要である。
 またポリマーは添加剤によりその性質をコントロールして機能性を改善することが可能である。老化防止剤、可塑剤、難燃剤など様々な添加剤が使用されている。ポリマー中の添加剤の解析は品質評価、新規材料の研究開発など様々な分野で組成解析と同様に重要である。
 熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(Pyrolysis Gas Chromatograph Mass Spectrometer (Py-GC/MS))は、簡便・迅速にポリマーの組成推定や含有する添加剤の微量分析が可能な分析装置である。本稿ではPy-GC/MSの概要と、本装置を用いたポリマー材料の組成解析、添加剤解析の事例を紹介する。

2.Py-GC/MSを用いたポリマー解析

 Py-GC/MSによる分析の流れを図1に示す。まず、試料となるポリマーをカッター等で削り、専用の試料カップに0.1から1.0 mg程度入れる。次に、試料の飛散防止のためガラスウールを1.0 mg程度詰めて、試料調製は完了である。有機溶媒を用いた煩雑な前処理を必要とせず、簡便・迅速に分析できる点が本手法の大きな特徴である。
 自動での連続分析が可能なオートショットサンプラーに試料カップを設置し、分析をスタートさせる。試料カップは1つずつ順番に熱分解装置(パイロライザー)の内部に投下される。パイロライザーの内部は加熱炉となっ

全文:約4856文字

関連キーワード:

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー