現場に役立つゴムの試験機入門講座 第6回 老化試験について

2021年03月02日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

シリーズ連載② 現場に役立つゴムの試験機入門講座
第6回 老化試験について

蓮見―RCT代表 蓮見正武

 ゴムは比較的劣化しやすい高分子物質です。「劣化」は英語でdegradation(等級を落とす)と言われるように材料が本来持っている性能や品質が低下することで、その原因は熱、光、紫外線、放射線、酸素、オゾン、力学的変形、疲労、微生物、薬品など多岐にわたります。
 ゴム製品が使用中にもろくなったり、表面に亀裂が入ったり、粘りついたりすることは日常よく見られます。このような現象はゴムの老化(ageing)と呼ばれ、主な原因は空気中の酸素による酸化作用で、次のように分けられます。
(1)‌自動酸化反応(酸化生成物が触媒となって、更に酸化を促進する反応)による過酸化物が発生し酸素を含んだ基が生成する。
(2)‌過酸化物の分解によりゴム分子が切断して低分子量化し粘着性が増大する。
(3)‌過酸化物の分解に伴う酸素による架橋が生じゴムは硬化しもろくなる。
 これらの酸化反応は熱や光によって促進されるのでゴムは高温で老化が進みます。

老化試験の規格

●ISO 188:2011
Rubber, vulcanized or thermoplastic-
Accelerated ageing and heat resistance tests

●JIS K6257:2017
加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-熱老化特性の求め方
Rubber, vulcanized or thermoplastic
-Determination of heat ageing properties

●ASTM D573-04(2019)  オーブン法
Standard Test Method for Rubber-Deterioration in an Air Oven
●ASTM D865-11(2018) テストチューブ法
Standard Test Method for Rubber-Deterioration by Heating in Air (Test Tube Enclosure)

●中国規格GB/T3512-2014
硫化橡胶或热塑性橡胶 热空气加速老化和耐热试验
Rubber, vulcanized or thermoplastic-
Accelerated ageing and heat resistance tests
-Air-oven method

老化試験の変遷

 旧JIS K6301「加硫ゴム物理試験方法」は1950年(昭和25年)に制定されました。引張試験、永久伸び試験、硬さ試験、老化試験のわずか4項目ですがゴムの耐老化性は重要な項目でした。
 JIS K6301は1995年の最終版では18項目が網羅される規格となり、老化試験は
(1)空気加熱老化試験(ギヤー式オーブン)
(2)加圧酸素加熱老化試験
(3)加圧空気加熱老化試験
(4)試験管加熱老化試験(テストチューブ式)
 の4種類が規定されていました。
 空気加熱老化試験はギヤー式試験機またはこれに準じた装置を用い、1時間に1回以上の空気置換を行い、槽内の温度の許容差は中央部に対して±2℃とされていました。試験温度は原則として70±1℃とし、特に高温を必要とするときは100±1℃又は120±1℃で、試験時間は原則として24、48、96、168、336時間のいずれかとされています。
 試験管加熱老化試験は外径約38mm、長さ約300mmのガラス製試験管を用い、試験温度は原則として120±1℃として必要に応じて150±1℃までの温度、試験時間は原則として8、16、24、48、72、96時間のいずれかとされて、ギヤー式よりも高温短時間で行うことになっていました。
 JIS K6301は1998年に廃止され、ISO 188準拠に改められましたが、ISO 188:1982にはギヤー式オーブンに相当するものがなかったのでJIS K6257:1993は
(1)ノーマルオーブン法(ギヤー式オーブン法)
(2)セル形オーブン法
(3)テストチューブ法
(4)加圧酸素加熱老化試験
 の4種類を規定しました。
 ノーマルオーブン法の試験装置は「ギヤー式老化試験機またはこれに準じる装置」で、JIS K7212「熱可塑性プラスチックの熱安定性試験方法」とJIS B7757「強制循環式空気加熱老化試験機」を参考に、空気の入替え回数が3~10回/時間、槽内の平均風速が0.5±0.1m/sと定められました。1)
 ISO 188:1998はセル形オーブン、キャビネット形オーブン、強制循環形オーブン(縦風式)、加圧酸素チャンバー式の4種類の装置を規定していますが、やはりギヤー式オーブンは含まれていません。そこでJIS K6257:2003はISO 188:1998に合わせたA-1法「強制循環形空気加熱老化試験機(縦風式)と、A-2法「強制循環形空気加熱老化試験機(横風式)(ギヤー式老化試験機とも言う)」と独自にギヤー式オーブンを付け加えました。また、テストチューブ式もB-3法として付け加えました。
 更に、JIS K6257:2003はISO 188:1998に合わせて促進老化試験と熱抵抗性試験が記載されました。
 促進老化試験は酸素と熱とが共存し、厳しくした条件で短時間に老化させる試験、熱抵抗性試験は製品の使用される温度で酸素(空気)との接触が少なく、主として熱によって老化が進行する試験と定義されました。(この定義は2010版以降変更されています)
 ISO 188:1998にはギヤー式オーブンは採用されていませんが、

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