ポリ乳酸(PLA)用結晶核剤「エコプロモート®」シリーズの特徴と用途

2021年02月25日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 バイオプラスチックの現状と将来展望

ポリ乳酸(PLA)用結晶核剤「エコプロモート®」シリーズの特徴と用途

日産化学㈱ 諏訪剛史

1.はじめに

 地球温暖化問題や石油枯渇問題を背景に、従来から使用されてきた石油由来プラスチックをバイオプラスチックへ置き換えようという需要が20世紀後半から高まってきた。特に近年では海洋プラスチック問題などを背景に石油由来プラスチック製品の利用に対してより厳しい目が向けられていることなどから、天然由来、または生分解性のプラスチック製品に対する需要はますます高まってきている。
 ポリ乳酸(Poly lacticacid(PLA))の構造を図1に示す。PLAはトウモロコシ等の糖分を原料として作られる生分解性ポリマーであり、一般的なプラスチック製品に用いる熱可塑性樹脂として適度な加工性や力学物性を持つことから、従来の石油由来プラスチックの代替と成りうるバイオプラスチックとして古くから注目を集めてきた。

2.PLA成形体を製品化する際の課題

 PLAのような結晶性ポリマーが固体として存在する際の状態は大きく二つに分けられる。ひとつはポリマーの分子鎖がランダムに絡まりあった状態で固体化した非晶状態、もうひとつはポリマー分子鎖が相互作用によって規則配列した結晶格子からなる結晶状態である。
 非晶部分ではポリマー固有のガラス転温度(Tg)を超えるとそれまで束縛されていた分子鎖が運動を開始することでガラス状態からゴム状態へ変化し軟化・変形を示す。一方で結晶部分ではTgを超えても分子が運動し始めることはなく、結晶が崩壊する融点(Tm)を超えるまでは変形することなく固体状態を維持することができる。
 PLAのTgは約60℃、Tmは160~180℃であるため、非晶性の成形体では日常使用で想定される熱水との接触や真夏の車内環境などに対する耐熱性は不十分であり、このような使用環境を想定するとより耐熱性の高い結晶性の成形体が求められる(図2)。
 非晶性の成形体を得るには溶融温度以上に加熱したポリマーを所定の型内でTg以下へ冷却し固化させるのみでよいが、結晶性の成形体を得るにはポリマー分子が結晶へ移行するために運動できるTg以上の温度、かつ生成した結晶が崩壊しないTm以下の温度で保持する必要がある。成形工程中でこのような温度保持を行う場合、Tg以上の温度では非晶質部分は容易に変形するゴム状態であるため、十分に結晶化が進行するまでは形状の安定した成形体を得ることができないこととなる。
 PLAの結晶化速度は同じく結晶性ポリマーのポリプロピレンなどと比較すると非常に遅く、結晶性のPLA成形体を得ようとすると上記の結晶化工程に長時間を要するため成形サイクルが悪いことが大きな課題となっている。この課題を解決するには結晶化を促進する結晶核剤の添加が有効とされている。

3.結晶核剤

 結晶核剤とは、ポリマーが結晶化する際の核として作用する添加剤である。樹脂へ結晶核剤を添加した場合、ポリマー単独ではランダムかつ低確率で発生する結晶核の生成が最初から完了しており、その結晶核数も非常に多い状態になっていると考えることができる。そのため、ポリマーが結晶化を開始するまでの時間は早期化され、体積当たりの成長結晶数も増加することから全体の結晶化が完了するまでの時間も短縮されることとなる(図3)。
 当社はこれまでにPLA用の結晶核剤として高い効果を示す材料を見出し、エコプロモート®シリーズとして開発を進めてきた。現在、エコプロモート®シリーズではエコプロモート®、およびエコプロモート®-TFの2グレードを展開しており、以降その効果や特性について説明することとする。

4.エコプロモート®

 エコプロモート®はエコプロモート®シリーズの基本グレードであり、PLAに対して極めて高い

全文:約4835文字

関連キーワード:

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー