接着でもなく溶着でもない 異材樹脂接合技術「AKI-Lock®」

2020年10月02日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 次世代に向けた接着・接合技術と最近の動向

接着でもなく溶着でもない異材樹脂接合技術「AKI-Lock®

ポリプラスチックス㈱ 見置高士

1.はじめに
 エンジニアリングプラスチック(以後、エンプラ)は、自動車部品、電気・電子製品、その他多くの工業製品において金属素材を代替することで軽量化に貢献してきた。特に近年の自動車分野では、排ガス規制や低燃費化、脱石油燃料化といった面で、軽量化は重要な位置づけとなっている。その手法としてマルチマテリアル化は大きく注目されており、樹脂-樹脂もしくは樹脂-金属といった異材の組合せでの接合要求が増えている。主に単体の材料では実現困難な特性付与を目的に、一部の素材を別の特性を持った素材に置き換える複合部材が多く検討されている。一方で、二つの素材間には接合界面が存在するため、接合力や気密性が必要とされる場合には技術的な難易度が非常に高くなり、まだまだ課題が多い。
 従来のマルチマテリアル化(特に樹脂同士の接合において)は、かしめ等の機械的接合や接着や溶着が中心であったが、機械的接合においてはボルト・ナット・ガスケットなど部品点数や工数の増大、接着においては長い硬化時間と接合強度の低さ、溶着においては材料選定における制約が課題として存在する。これら課題を解決するため、各社様々な取り組みが行われている。 
 当社では、近年「AKI-Lock®(Advanced Knitting Integrated Lock)」というこれまでに無い斬新な異材接合技術を開発した。溶着でもなく接着でもない当技術は、材料の制約も少なく、従来では難しかったさまざまな異材の組合せで強固な接合が可能である。
 本稿では、AKI-Lock®の技術内容と接合事例等を紹介する。

2.AKI-Lock®とは
 AKI-Lock®とは、当社独自の樹脂-樹脂接合技術の総称であり、その特徴はガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の成形品内に添加されたガラス繊維(GF)を、物理アンカーとして利用した接合技術である。
 図1に本技術の基本的な接合プロセスについて示す。まず、ガラス繊維強化材料を用いて1次材となる成形部品を準備し、1次成形品の接合させたい面にレーザー処理を施す。レーザー条件を工夫すると、内部のガラス繊維は残したまま樹脂分だけを除去し、ガラス繊維が露出された状態を作製することが可能である。図2に1次成形品のレーザー処理面のSEM画像を示す。図2に示すように、1次材料が除去された溝内には、多数の残存したガラス繊維が四角形に残された樹脂部に橋渡し状に保持されている様子が観察される。この処理を施した成形品を1次成形品とし、たとえばインサート成形等で2次材料を溝に流れ込ませることでガラス繊維が物理的なアンカーとなって強固な接合を発現する(図1)。この時、ガラス繊維による物理的なアンカー効果による接合のため、1次材と2次材が溶融混合する必要はない。したがって、異材樹脂でも接合が可能となり、さらに溝に流し込ませることができれば2次材側の材料選定に制約がないのが大きな特徴である。

3.AKI-Lock®の諸特性
3.1 接合強度(インサート成形)
 表1にAKI-Lock®の接合強度(インサート成形の場合)を示す。表1より、レーザー処理無の状態では全く接合しない一方で、AKI-Lock®処理を施すと1次材にガラス繊維が添加されていれば、融点差や相溶性に関わらずかつ異材であっても、どちらかの材料が母材破壊する程度に高い強度で接合が可能であることがわかる。また表2より、2次材が熱可塑性エラストマや熱硬化性エラストマ(ゴム)のような、柔軟な材料であっても非常に強固な接合が可能である(図3)。したがって、ガスケット等のシール部材を射出成形で組み付けるなど、ガスケットの脱落防止や後工程の簡略化にも寄与することが期待される。
3.2 接合強度(接着剤)
 AKI-Lock®は接着剤の前処理としても非常に有効である。通常、接着剤による接合は樹脂と接着剤の相性があるため最適な接着剤種を選択する必要があるが、組み合わせによっては接合強度が弱いケースが多々ある。接着工程の前処理としてレーザー処理を行い、接着剤がガラス繊維と絡み合い強固に接合できれば、接着剤と樹脂の相性は無関係に接合が可能となる。
図4に試験結果を示す。レーザー処理は試験片双方の接合面に施し、一液エポキシ系接着剤を用いて評価を実施した。接合材料は、一般的に難接着材とされているPOMを用いて評価実施している。
 AKI-Lock®処理を前処理として施すことで


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