熱可塑性エラストマー(TPE、全般)|その他プラスチック

2020年08月09日

ゴムタイムス社

【開発経緯概略】
熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomers:TPE)は、常温では加硫ゴムの性質(エラストマーとしての性質)を示すが、高温では塑性流動が可能となり、プラスチックの加工機で成形できる高分子材料と定義される。加熱により可塑性を示すエラストマーなので熱可塑性エラストマーと呼ばれる。TPEは、エラストマーとして加硫ゴムの性質を持っているが加硫を必要としない材料である。ゴムとプラスチックの中間的な特徴を数多く持っている。

【性質、加工、その特徴】
加硫ゴムと比較したTPEの長所・短所は以下の通りである。
●TPEの長所
① 熱可塑性プラスチックの成形機で成形できる。射出成形、圧縮成形、ブロー成形、押出成形、トランスファー成形などがいずれも可能である。
② 通常のゴムでも射出成形による加硫は可能だが、TPEの射出成形の場合には、成形サイクルを大幅に短くすることができる。
③ 押出成形では、TPEは押出速度を非常に速くできる。
④ TPEは、通常の生ゴムの加硫ゴムでは不可能なブロー成形、押出成形、トランスファー成形が可能である。したがって、加硫ゴムでは製造不能なフィルム、薄いシート、パイプ、複雑な部品が容易に製造できる。
⑤ TPEは製造中に発生するバリや製品スクラップの再利用ができるため製造コストが低減される。また製品のリサイクルに有利である。
⑥ 加硫剤を必要としないため純粋なゴム製品が製造できる。
⑦ 新しいエラストマー材料として、加硫ゴム代替以外の用途に使用でき、相溶化剤や樹脂ブレンド用途など新規な市場が開発されている。

●TPEの短所
① 加硫ゴムと比べ、TPEは温度上昇によって物性低下が大きく、塑性変形も増大する。すなわち、耐熱性が不十分で限界がある。
② 加硫ゴムと比べ、TPEは永久ひずみが大きい欠点、すなわちゴム弾性が不足している。
③ 加硫ゴムと比べ、耐久性、繰返し疲労性に劣る。
④ 原料TPEに高コストのものが多い。
一方、プラスチックに対するTPEの特徴は以下の通りである。
① 軟質樹脂に比較して、永久ひずみが小さく、強靭性に優れ、耐久性も良好である。
② プラスチックにTPEをブレンドすることにより、弾性を付与し、強靭性アップ、脆性の改良、耐衝撃性改良などの高性能化が可能である。
③ TPEは弾性があるので、フィルム、シート、粘着剤、接着剤などの応用製品としての高機能性や高性能を付与できる。
④ TPEをブレンドすることは、材料コストのアップ、加工性の悪化につながる場合が多いので、製品性能と関連したコスト・パフォーマンスの設定に注意を要する。
⑤ TPEは分子中に樹脂成分とゴム成分を含むため、各種ポリマーアロイの相溶化剤として、他の材料では得られない効果を示す。

●熱可塑性エラストマーの種類

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