オールシーズンの性能体感 TOYO TIREが試走会

2020年03月02日

ゴムタイムス社

例年より積雪が少ない中で開催された

 TOYO TIREは2月21日、北海道佐呂間町の冬期タイヤテストコースでオールシーズンタイヤ等の試走会を実施した。同社がメディア向けにオールシーズンタイヤの試走会を行うのはこれが初となる。
 試走会の冒頭、清水隆史社長があいさつし、まずタイヤテストコースについて、「さまざまな知恵を集めて形にした製品を実際の車両に装着して運転し、性能の確かさを点検する現場なので、いわば大事な最後の砦のようなところで、タイヤ作りの聖域とも言える厳かな場所だと考えている」と見解を述べた。
 続いて清水社長は、オールシーズンタイヤについて「当社は2000年代の後半からこの分野に着目して商品開発を進めており、ようやく市場が反応を示してきたと感じている」と現状を語った上で、今回試乗する「セルシアス」について「国内ではSUVサイズを中心に昨年発表したが、実は2015年に北米で発売した商品だ。オールシーズンタイヤは、雪道であれば安心して走行できるし、一年を通して走行が可能なので、新しいマーケットを開拓できる新しいカテゴリーの製品であり、力を入れていきたい」と期待を示した。

あいさつする清水社長

 この後、REタイヤ開発部の島一郎部長がセルシアスの詳細を紹介した。開発の背景には東名阪エリアでも近年は大雪が降るケースが増えていることがあり、島部長は「お客さまから突然の降雪に対して車が動けなくなる状況は回避したいという声があった」と説明した。同社のSUV向け商品には、スタッドレスの「ウィンタートランパスTX」や「オブザーブGSi―5」、夏タイヤの「プロクセス」や「オープンカントリー」ブランドの商品があるが、「圧雪路面から舗装路面まで高機能を発揮する商品を求めるお客さまの声もあり、オールシーズンタイヤの投入を進めている」(島部長)。そこで投入したセルシアスは、「突然の降雪にも対応した全天候型オールシーズンタイヤ」がコンセプトで、雪道でも安心感のあるスノー性能を有しスノーフレークマークが打刻されているほか、安定した走りを実現するドライ・ウエット性能も兼ね備えている。採用技術では、パターンの内側と外側で機能を変えていることが特徴で、スノー性能を重視する内側には、グリップ力を高める3Dグリップサイプやスノー・トラクションを向上させるジグザグブロックを採用。ドライ・ウエット性能を重視する外側には、3Dグリップサイプに加え、接地性を高める溝底補強ブロックと操縦安定性に寄与する周方向連結ブロックを採用している。これらにより、「一定のスノー性能が達成でき、ドライ・ウエットの路面でも問題なく走行できるという高いバランスを取っている」(同)。

商品説明する島部長

 そして、0℃をやや上回る気温で小雪が断続的に降る天候の中、テストコースに移り、セルシアスを装着したトヨタRAV4で試走を行った。

試走の模様

 まず、後部座席に座り、モータージャーナリストの五味康隆氏の解説を聞きながら乗り心地を体験した。圧雪の上に降ったばかりの柔らかい雪が載った路面での発進はスムーズで、時速20km以下の低速でのコーナリングもドライ路面走行時と遜色ない安定感があったが、五味氏は「夏用タイヤなら今の速度では全く曲がれない」とスノー性能の高さに言及した。次に、直線路に入り40km程度で走行。ここで五味氏は、欧州メーカーのオールシーズンとの違いを語り、「欧州製は時速180~200kmの高速領域まで想定しているので少し硬い印象で、セルシアスのようなドシッとした安心感はない」と話した。凍結状態に近い路面に差しかかると、五味氏は「アイス状の路面はやはり注意した方が良い。走れなくはないが安心感も少ないので、緊急時に車を動かす場合だけという形だろう」と指摘した。実際、アイス状の路面のカーブでは若干の横滑りを感じた。五味氏は上手な走り方を提案し、「スタッドレスでも昔は路面が凍っていそうなら手前で信号待ちをするなどの工夫をしていたが、オールシーズンでも昔のような工夫を駆使すれば実は普通に走れる。今のオールシーズンには昔のスタッドレス程度のグリップレベルがあるだろう」と分析した。コースが再び降雪中の圧雪路面になると、五味氏は「圧雪路ではスタッドレスに準ずる能力を持っている」と評価。緩い上り坂で停止して再発進した際も問題なく進み、下り坂でも安定したトラクション性を感じた。五味氏は「一般の道では過信せずに使う分には普通に使えるだろう」と総評した。

低速のコーナリングは安定感があった

 続いて、モータージャーナリストの橋本洋平氏に同乗してもらい、同じコースで同じ車両を運転してみた。直進路で時速60kmまで加速すると、降雪中の圧雪路ではドライ路面を走行している際と同等の操縦安定性を体感できた。時速50kmでレーンチェンジを試みたところ、後輪がやや横に滑るのを感じた。橋本氏は「縦方向のトラクション性能・ブレーキ性能は高いが、横方向とのバランスが悪いのがオールシーズンの特徴でもある。その点を頭に入れ、ストレートな部分で加速・減速をしっかり行うことに気を付けて乗れば、かなり良いタイヤだ」と解説した。その後、カーブを時速30kmで走っても、上り坂や下り坂を時速40kmで走行しても特に問題はなく、非降雪地域の雪道でゆっくり走るのであれば、かなり安心して走れるという印象を受けた。緩い下り坂でブレーキを踏みこんでみたが、予想以上に短い距離で停止できた。橋本氏は「オールシーズンは各社によって性格が違い、オンロード寄りで静粛性も求めるタイプと、スノーをしっかり走れるタイプがあるが、セルシアスはどちらかというとスノー性能が高いタイプという印象だ。10年前のスタッドレスの性能は達成しているのではないか」と話し、スノー性能を高く評価した。

下り坂でも高いトラクション性能を発揮

 試走終了後、守屋学執行役員が「われわれが抱いていた性能を体感していただけたと思う。このような安全な良い商品をしっかりお客さまにお届けしていきたい」とあいさつし、

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