住友ゴム 新技術「アドバンスド4D・ナノ・デザイン」を発表

2015年10月29日

ゴムタイムス社

 住友ゴム工業は10月29日、タイヤの相反性能である低燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能の大幅な向上が可能となる「アドバンスド4D・ナノ・デザイン」を完成させ、同技術を採用したコンセプトタイヤ「耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ」を「第44回東京モーターショー2015」に参考出品すると発表した。

 同技術は、独自の新材料開発技術「4Dナノ・デザイン」を、さらに進化させたもの。大型放射光施設「SPring―8」、大強度陽子加速器施設「J―PARC」、スーパーコンピューター「京」を連携活用することで、ゴムを分子レベルで忠実に再現した、シミュレーション解析を行うことを可能にした。

 同社では11年にゴム材料の構造や性質を予測し、自在にコントロールすることで、高性能タイヤに求められる材料を科学的・合理的にナノレベルで高精度に設計することができる4Dナノ・デザインを完成させ、高機能タイヤ用材料開発を推進してきた。

 しかし、タイヤに求められる性能がますます高度化する中、4Dナノ・デザインではゴム内部をより鮮明に解析することに限界があり、相反性能である低燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能を同時に向上させるには、さらなる技術の進化が必要だった。

 今回完成したアドバンスド・4Dナノ・デザインは、低燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能という、相反性能であるタイヤの三大性能を高い次元で両立するために、ナノからミクロンレベルまで、ゴムの内部構造を連続的かつ鮮明に解析し、シミュレーションすることを可能とする技術だ。

 SPring―8でゴムの構造解析を行い、世界最高クラスの中性子・素粒子実験ができるJ―PARCで運動解析を行うことで、ゴムの内部構造と分子の運動を鮮明に観察することが可能となった。これにより、これまで見えなかったシリカ界面ポリマーの構造や運動、硫黄架橋の不均一性・硫黄架橋長さ分布、シリカネットワークの運動などを捉えることに成功した。

 さらに、スーパーコンピュータ「京」によって、広い領域を分子レベルでシミュレーションすることにより、ゴム内部のストレスや発熱が発生している箇所を同時に特定することが可能になった。

 このシミュレーションで原子、分子の動きを詳細に解析した結果、ゴム内部のストレスや発熱を発生させている原因が、シリカネットワーク運動、架橋構造、シリカ界面ポリマー運動と密接に関係していることが分かった。

 そこで、このストレスを発生させる原因を低減する「ストレスコントロールテクノロジー」を確立。これにより、相反性能であるタイヤの三大性能を向上することが可能となり、低燃費性能、グリップ性能を維持しつつ、耐摩耗性能を飛躍的に向上させるゴムの開発に成功した。

 この成果を用いたコンセプトタイヤが「耐摩耗マックストレッドゴム搭載タイヤ」である。このコンセプトタイヤのトレッドゴムは、低燃費性能とウエットグリップ性能を維持しながら、耐摩耗性能を200%に向上させることに成功した。

 今後はストレスコントロールテクノロジーの活用により、タイヤの三大性能を高次元でコントロールし、向上させることが可能になるという。

 同社では今回完成した技術を活用し、材料開発のスピードをさらに上げ、今後も高性能で経済性と環境性に優れたタイヤを届けていく方針だ。

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