【コラム連載シリーズ】創業者山田猪三郎の軌跡【9】~気球製作所豊間清氏

2018年02月02日

ゴムタイムス社

創業者山田猪三郎の軌跡 

 今回も主題と離れますが、高層気象観測のことを少しお話ししたいと思います。

「高層気象観測の役割」

 高層気象観測は上空の気温、気圧、湿度、風速風向を観測するものです。現在は平均約30kmの高度まで観測しています。私達が乗っている飛行機の高度が10km程ですのでその3倍の高さまで観測をしています。このデータは天気予報を作るうえで欠かせない基礎値です。また航空機の安全運航のための即時値でもあります。さらに蓄積された資料は大気現象の把握や解明のための調査研究に使われます。日本では北は稚内から西は石垣島、南は南鳥島まで全国16ヵ所と昭和基地で観測されています。世界では約800ヵ所で世界標準時0時と12時(日本では9時と21時)に同時に観測されています。このデータは世界気象機関(WMO)に集められ、前述のような目的で世界中で共有されます。昔の天気図、例えば皆さんご存知の陸軍の八甲田山雪中行軍の日の等圧線は、日本の上空だけしか描かれていません。そのため天気予報の精度はかなり低かったと思われます。今は世界中の等圧線が連続しています。まさに天気図には国境がありません。

「高層気象観測の歴史」

 地上での気象観測の延長として1902年(明治35年)に筑波山で定時観測が始まりました。大正時代には凧に温度計や湿度計をつけて上げそれをいち早く降ろして記録を取っていました。また曽祖父の飛行船の原型となった係留気球に自記

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