三井化学は6月30日、2026年「三井化学 触媒科学賞」および「三井化学 触媒科学奨励賞」の受賞者を決定したと発表した。
同社グループは、化学および化学産業の持続的発展に寄与する目的で、世界の触媒科学分野において特に優れた業績を挙げた研究者を表彰する制度を2004年に制定し、2005年3月に第1回の表彰を行っている。
第11回となる今回は、多数の応募の中から受賞者を決定した。授賞式と各受賞者による記念講演は、2026年10月に実施する。
2026年「三井化学 触媒科学賞」の受賞者は、スクリプス研究所教授のPhil S・Baran博士となる。タイトルは「触媒的ラジカルクロスカップリングによる分子合成の革新的簡素化」。Phil S・Baran博士は、単電子移動を制御する独自の触媒系を開拓し、触媒・有機合成化学の分野を牽引する研究者となる。特に、カルボン酸等の身近な原料から直接ラジカルを発生させる「触媒的ラジカルクロスカップリング」を創出。希少な貴金属に依存せず、鉄やニッケル等の豊富な卑金属触媒や電極界面での電解触媒作用を巧みに組み合わせ、誰もが再現できる堅牢な反応場を構築した。複雑な分子構造を最短工程かつシンプルな触媒反応で連結する実用的アプローチを確立した業績が高く評価された。
2026年「三井化学 触媒科学奨励賞」は、カリフォルニア工科大学教授のKarthish Manthiram博士と、カリフォルニア大学サンタバーバラ校准教授のYang Yang博士。
Karthish Manthiram博士の受賞タイトルは「二酸化炭素、窒素、および水を原料とする不均一系電気触媒反応」。Karthish Manthiram博士は、環境調和型電気化学反応システムの創出を世界的に先導する研究者となる。特に、Li媒介型の電気化学的アンモニア合成システムの構築に加え、電気化学的ヒドロホルミル化反応や水由来酸素を利用した電気化学的プロピレンエポキシ化反応を実現するなど、持続可能な物質変換分野の発展に大きく貢献した。
Yang Yang博士の受賞タイトルは「立体選択的ラジカル炭素―炭素結合形成を可能にする生体触媒戦略」。Yang Yang博士は、生体触媒である酵素を人工的に進化させ、反応性が高く制御の難しいラジカルを利用した炭素、炭素結合形成を、精密かつ立体選択的に進行させる新しい触媒戦略を開拓した。特に、金属酵素を用いたラジカル環化や芳香環官能基化に加え、酵素の精密な反応空間内で光によりラジカルを発生・制御することで、自然界には存在しない多様な分子変換を実現した。同研究は、温和な条件で複雑な高付加価値分子を構築する持続可能な化学合成を可能にし、今後の触媒科学および精密分子合成の発展に大きく貢献するものとなる。
なお、授賞式・受賞記念講演は、日本化学会秋季行事「第16回CSJ化学フェスタ2026」内の同社主催コラボレーション企画「触媒科学フォーラム~触媒科学最前線~」において触媒科学賞および触媒科学奨励賞の授賞式、受賞記念講演を実施する。日程は2026年10月20日午後、会場はタワーホール船堀(東京都江戸川区)となる。



