近畿大学医学部(大阪府堺市)放射線医学教室(放射線腫瘍学部門)教授 門前一氏、同医学部講師 植原拓也氏らを中心とした研究グループは1月9日、ゴム製品メーカーである早川ゴムとの共同研究により、超音波診断に用いる液体超音波ゼリーの代替となる、新しい固形超音波診断用ゲルパッドを開発したことを発表した。
従来の超音波ゼリーは特有のベタつきがあり、拭き取りが必要なため患者が不快に感じるという課題があったが、この新しい固形ゲルパッドは、60分以上乾燥しないため追加塗布も不要で、試用テストでは患者満足度が有意に向上した。また、肝心な超音波検査においても、従来の液体超音波ゼリーと同等の品質であることを確認した。
本件に関する論文が、令和8年(2026年)1月12日19:00(日本時間)に、国際的な科学学術誌「サイエンティフィック リポーツ」に掲載された。
超音波診断は、低侵襲で信頼性の高い画像診断法として広く普及している。超音波診断では、超音波を発信し、体内から返ってくる反射(エコー)を受信する探触子(プローブ)と皮膚の間の空気を除去し、超音波を効率的に伝達するために、ゲルまたは液体媒体が必要不可欠である。現在、医療現場では液体超音波ゼリーが広く使用されているが、以下のような課題が指摘されている。
患者の不快感:衣服や髪の毛に付着する場合がある、検査後の拭き取り作業:患者・医療従事者双方に負担がかかる、乾燥の問題:約15分で乾燥しはじめ、長時間の検査では追加塗布が必要である。
これらの課題を解決するため、近年、ゼラチンを用いた固形ゲルパッドも開発されているが、保湿性能の維持や管理・保管の煩雑さに改善の余地があり、さらに別の素材を用いたゲルの開発が求められていた。
研究グループは、現在医療現場で使用されている液体超音波ゲルの課題解決のため、「タマリンドシードガム」を主成分とする新しい固形超音波診断用ゲルパッドを開発した。「タマリンドシードガム」は、マメ科の常緑樹であるタマリンドの種子を分離精製して得られる食品・化粧品分野で使用実績のある天然多糖類で、優れた保水性と生体適合性を持つことが知られている。
開発したゲルパッドについて、健康な協力者4名を対象に従来の液体超音波ゼリーとの比較評価を実施した。その結果、研究グループが開発した「タマリンドシードガム」を主成分とするゲルパッドは、従来の超音波ゼリーが抱えていた「ベタつき」「乾燥」「拭き取りの手間」といった課題を解決し、自己保湿機能により60分以上乾燥せず追加塗布が不要で画質劣化もなく、患者満足度が大きく向上することが確認された。画像品質も従来のゼリーと同等で、3種類ある超音波診断用のプローブすべてにおいて使用可能であることも明らかにした。

