分野別に見る2026年の業界展望 

2026年01月20日

ゴムタイムス社

 海外では米国によるベネズエラへの攻撃や日中関係の冷え込みなど地政学的なリスクが深まっている。国内では物価高騰や人手不足などの課題が依然として横たわるなかでスタートした2026年。ゴム産業の主要業界である自動車産業ではEV市場が停滞。日本車メーカーが得意とするHV車が存在感を高めている。そうした環境下、合成ゴムやホース、ベルト、CMB、ゴム用機械、ゴムロールなど各分野の今年の需要動向を展望した。

 合成ゴム
 汎用ゴムは競争激化で鈍化

 25年の合成ゴム市場を振り返ると、化学メーカー各社でエチレンプラントの統廃合が進み、グリーンケミカルへの転換を見据えた取り組みが加速した。一方需要動向では、米国の関税政策の影響を受けて先取り需要が発生したこともあり、年後半にかけて需要が減速する展開となった。合成ゴム工業会がまとめた25年1~9月の合成ゴム生産量は、前年同期比4・4%減。1~3月は増加傾向だったものの、4~9月は6カ月連続で前年割れとなり、市場の勢いは鈍化した。
 汎用ゴムでは、海外市況の停滞や中国メーカーとの競争激化を背景に、販売数量が伸び悩んだ一方で、低燃費タイヤ向けとして需要が高まるSSBRは、海外市場を中心に堅調に推移した。特殊ゴムは自動車生産の動向と密接に連動するため、東南アジアや欧州では需要が弱含んだものの、国内では自動車生産が堅調に推移したことから、一定の需要を確保したメーカーもある。
 2026年の市場見通しについては、地政学的なリスクやブタジエン価格の下落などを背景に全体として活気を欠く状況が続くとみられる。海外市場は地域ごとの差が大きく、欧州や東南アジアは弱含み、インドは好不調が交錯するなど不透明感が強くなるだろう。

 ゴムホース
 自動車用は前年並みと予測

 日本ゴムホース工業会が昨年末に発表した26年のゴムホース生産量(新ゴム量)は前年見込比0・5%増の3万2840tと予測する。品種別にみると、生産量の約7割を占める自動車用は同0・6%増の2万3250tとほぼ横ばいと予測。米国の関税影響が不透明ではあるものの、米国への輸出減を他地域でカバーすることで、国内の自動車生産台数は横ばいで推移するとみている。
 建設機械や工作機械を主要需要先とする高圧用は同0・5%増の4580tと予測した。建設機械向けは主要市場の北米・欧州で回復傾向がみられるほか、工作機械も人手不足を背景とした省人化や新エネルギーや半導体関連の需要が堅調に推移するとみており、高圧用は生産回復に期待を寄せている。
 樹脂ホースの国内市場をみると、25年も引き続き業界でまだら模様の状況にある。自動車関連では、工場設備の需要が盛り上がりを欠いているほか、半導体関連では、受注するメーカーの需要動向によって各社の明暗が分かれている。一方、国土強靭化施策や災害からの復興工事関連に使われるホースやパイプの需要は26年も堅調に推移するとみられる。

 CMB 
 26年も続く需要不透明感

 日本ゴム精練工業会(JPMA)が会員企業を対象に実施したアンケート調査によると、2024年度のゴムコンパウンド生産量は7万2958トンとなり、前年から7・6%減少した。黒ゴム(加硫剤を含む)、色物・その他のいずれも減少し、23年度に増加へ転じた流れから再びマイナスに転じた形だ。
 また、JPMA加盟メーカーの多くが、2025年の課題として「受注量の減少」を挙げている。背景には、自動車分野や半導体分野の低迷があり、国内需要は一年を通じて汎用ゴム・特殊ゴムともに全体的な数量が落ち込んだ。ただし、25年後半からはフッ素ゴムなど特殊ゴムの需要が回復傾向にあるとするCMBメーカーも見られる。
 一方、海外拠点を持つCMBメーカーでは、中国の景気低迷が直撃し、厳しい受注環境が続いている。タイでも同様に受注が伸び悩む状況が続くが、インド市場は全体的に需要が拡大しており、明暗が分かれる構図となっている。
 26年も25年同様に、中国景気の低迷に加え、自動車生産の動向や原材料高など不安要素が多く、原材料やエネルギーコスト上昇に対応した価格対策がより求められてくるだろう。

 ゴムベルト
 内需は2%増を予測

 日本ベルト工業会によると、26年のゴムベルト生産量(新ゴム量)は1万6977tで前年見込比2・4%増と予測した。内需は1万3805tで同2・1%増、輸出は3171tで同3・3%増と予測する。品目別では、コンベヤは内需が鉄鋼産業他主力需要先が回復するほか、輸出もここ数年低迷していた鉱山需要が回復すると見込んでおり、コンベヤ全体は前年見込比5%増と予測した。伝動は世界経済全体に不透明感が残るものの、年後半から回復すると見ている。需要先では、自動車用は補修用が堅調。一般産業用は工作機械や射出成形機向けの回復に期待している。
 26年の樹脂ベルトの生産量は107万1660㎡で同5%増と予測した。主要分野の物流と食品の動向をみると、物流分野は、大型配送センターの新設・増設案件は一時期に比べると鈍化しているが、数年前に建てられた施設が更新期を迎えており、ベルトの取り替え需要は堅調に推移している。食品分野もベルトの交換需要は安定。多様化するニーズを捉えるべく、各社は機能性に富んだ新製品を上市する動きが続きそうだ。

 ゴム用機械
 高付加価値機械とサービス強化が鍵

 ゴム用機械メーカーの25年の需要動向を振り返ると、コロナ明けで経済活動が正常化へ向かい、設備投資意欲が回復し、受注環境は一時的に持ち直した。ここ数年を悩ませてきた部品不足も徐々に解消し、生産性の改善や売上増につながった企業も多い。ただし、利益面ではエネルギーコストの上昇や原材料価格の高騰が重くのしかかり、コスト増分を十分に販売価格へ転嫁できない状況が続き、利益確保に苦戦するメーカーが目立つ。
 海外の受注動向を見ると、中国市場は景気減速に加え、電気自動車(EV)シフトの影響で、自動車関連の日系企業が厳しい経営環境に置かれている。これがゴム用機械メーカーの受注にも波及し、海外需要は2026年も引き続き厳しい状況が続くとみられる。一方、国内市場では新規・増設案件がある一方、設備の老朽化に伴う更新・修理案件が中心となっている。2026年の動向を見ると、企業の設備投資が進む中、更新需要をいかに獲得するかが鍵となる。
 課題として、人材不足のため人材確保を挙げるメーカーが多い。加えて、DX対応や省エネ・環境対策など付加価値を備えた機械の開発力強化が求められるほか、アフターサービス体制の充実も競争力を左右する重要な要素となりそうだ。

 ゴム手袋
 法改正で化学防護手袋の需要が増加

 家庭用・作業用・医療用のカテゴリーに分かれるゴム・ビニール手袋。家庭用は物価上昇を背景に、小売店の店頭では購入サイクルを伸ばす消費者が増えており、販売数量は伸び悩みが鮮明。厳しい環境下、ショーワグローブやエステー、ダンロップホームプロダクツでは、環境に配慮した商品や従来にはないカラーバリエーションの商品など新たな切り口で需要の掘り起こしを狙っている。
 作業用手袋では、耐切創手袋や化学防護用手袋のカテゴリーが堅調だ。法改正を受けて、これら手袋を装着する動きが作業現場で広がっているためで、耐切創手袋や化学防護手袋では改正法に準拠した製品の提案に力を入れる動きが盛んだ。特に、化学防護用では、ダイヤゴムやショーワグローブ、ハナキゴムの国内メーカーに加え、海外メーカーも製品提案に力を入れ始めており、需要の取り込みに向けた動きが激しさを増している。
 医療用は、政府による買い付け、無償供与の影響もあり在庫がだぶついたが、ここにきて在庫も徐々に解消に向かっており、実需に戻りつつある。

 ゴムシート
 特殊ゴム板の本格回復に期待

 日本ゴム工業会統計委員会(ゴム板製品関係7社)がまとめた25年1~11月のゴム板(ゴムシート)生産量合計は1万4040tで前年比3・7%減、出荷量は1万3809tで同5・0%減と生産・出荷とも前年を下回る。「汎用品のゴム板は年後半に若干回復の兆しがみられる。特殊ゴム板は、シリコーンゴム板は少しずつ動き始めるも、半導体業界向けをメインとするフッ素ゴム板は客先によりまちまちの状況にある」(ゴム板メーカー)と語る。自動車生産はもちろん、半導体業界向けの本格回復に期待を寄せる。
 ゴム板は製品に占める原材料比率が高い。原材料やエネルギー価格は高止まりが続く。製造設備や物流、人件費などのコスト増が続いているほか、原料メーカーによる材料やグレードの統廃合への対応も負担が増している。生産効率や経費削減を進めているが、コスト増をすべて吸収するのは難しい。ユーザーに製品安定供給するためにも、コスト増に対応した製品価格に転嫁できるかが大切になろう。

 ゴムロール
 高機能フィルムの受注回復がカギ

 日本ゴム工業会統計委員会(ロール製品関係7社)がまとめた24年1~9月のゴム樹脂ロールの生産量は324万1812kgで前年同期比1・5%増と前年を上回る状況にある。分野別に見ると、印刷用ゴム樹脂合計の生産数量は102万3637kgで同1・7%減。デジタル化の進展に伴う紙離れに加え、ロール再生装置の導入、製品交換サイクルの長期化などを理由に、一般商業印刷や新聞用など印刷用ロールの受注は緩やかな減少傾向が続いている。
 製鉄用は87万2521kgで同1・5%増。製鉄所の統廃合などで受注環境は厳しいが、各社による拡販活動が奏功し生産量は前年同期を上回った。その他、染色・化繊用、第1次フィルム用、搬送機器用、外壁等住宅用等を含むその他用は97万7823kgで同5・3%増。その他用の今年は、フィルム用における高機能フィルム関連の本格回復に期待。高機能フィルム関連では、ゴミとりやシワ抑制、巻取りの課題解決や新規製作につながる提案が受注獲得のカギを握る。

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