年頭所感 横浜ゴム 清宮眞二社長

2026年01月09日

ゴムタイムス社

 「Yokohama Trans formation 2026(YX2026)」(ヨコハマ・トランスフォーメーション・ニーゼロニーロク)の初年度に当社は初の売上収益1兆円超えを達成しました。2年目となる今年も「進化と探索」による変革を推進し、持続的な成長を目指しています。

 タイヤ事業について、新車用タイヤ販売は国内の新規納入車種拡大に加えて北米においてもSUVとCUV車種を中心として新規納入が増加したほか、市販用でも国内における積極的な販売活動の効果や欧州でのハイインチ品販売活動の強化等、各地域で新規取引先の開拓や既存顧客との取引拡大が順調に進んだことから、売上収益はいずれも前年同期を上回りました。また、OHT(オフハイウェイタイヤ)事業は本年2月に買収完了したGoodyear社OTR事業の業績が加わったこともあり売上収益は前年同期を上回りました。
 農業機械用タイヤは特に新車用市場において、厳しい環境の中でしたが、当社はシェア向上を果たしたほか、補修用市場は各地域において継続して販売拡大に努めたことで、欧州・北米の主要地域で需要を上回る販売伸長を果たしました。
 MB事業では、ホース配管事業は国内建設機械メーカーおよび北米自動車メーカーの需要減により売上収益は前年同期を下回りましたが、工業資材事業では、コンベヤベルトは国内トップシェアの強みを活かして安定的な需要を得られたことで、売上収益は前年同期を上回りました。
 
 事業利益については、タイヤ消費財での販売数量増や、「ADVAN(アドバン)」、「GEOLANDAR(ジオランダー)」、ウィンタータイヤをはじめとする高付加価値商品(AGW)およびハイインチ品の販売増に加え、OHTはGoodyear社OTR事業の連結に伴う一過性費用の計上はありましたが、増益を確保しました。
 MB事業においても航空部品の収益性改善などにより、全社でも増益となりました。引き続き通期での過去最高達成に向け、事業活動を進めていきたいと考えています。

 YX2026の進捗について、タイヤ消費財では、「1年工場への挑戦」として、技術・生産戦略の「よいものを、安く、スピーディーに」というモットーに即して低コスト・高効率生産を実現し、市場競争力の高い工場を1年間で立ち上げることを目標に、中国杭州市に乗用車用タイヤ新工場の建設を進めてきました。2024年12月に起工式を開催し工場建設を進めていましたが、当初計画より1ヵ月前倒しの11ヵ月でタイヤ生産を開始し、先月11月22日に開所式を実施しました。
 同市内にある既存工場に比べ生産能力を約300万本増強し、生産能力は年産900万本で2026年第2四半期までには本格生産を開始する予定です。また、メキシコの乗用車用タイヤ新工場建設についても2027年第1四半期からの生産開始に向け順調に建設準備が進んでいます。
 続いて、「ADVAN」、「GEOLANDAR」、ウィンタータイヤのAGW構成比50%以上達成を「YX2026」の目標としている「高付加価値品比率最大化」の取組みについていくつか紹介します。
 新車装着について「ADVAN」ではメルセデスAMG社の「CLE53 4MATIC+Coupe」やBMW社の「7シリーズ」、BEV「i3」「i7」など欧州プレミアムカーへの納入を開始しました。また、中国のカーメーカーへの納入も本格化しています。
 「GEOLANDAR」では、日産の「アルマーダ」、トヨタの「4Runner」への納入を開始しました。さらに、ウィンタータイヤでも「ADVAN WINTER V907」がメルセデス・ベンツ社より「Eクラス」向けに技術承認を獲得しました。日本のみならず、欧州においてもウィンタータイヤのさらなる拡販に取り組んでいきます。
 市販用タイヤでは、革新的な冬用タイヤ新技術コンセプト「冬テック」を採用して「氷に効く=氷上性能」を飛躍的に向上させた乗用車用スタッドレスタイヤであり、2025年グッドデザイン賞を受賞した「iceGUARD 8(アイスガードエイト)」を発売し今年の冬商戦に臨んでいます。
 モータースポーツ活動では、「ADVAN」装着車が「SuperGT」のGT500クラスにおいて第6戦で優勝、同じくGT300クラスでは全8戦中5戦で勝利し、2年連続のシリーズチャンピオンは逃したものの2位~5位までを独占。また、「全日本ダートトライアル選手権」最高峰クラスでのシリーズチャンピオンの獲得。「GEOLANDAR」はアジアクロスカントリーラリーで2年ぶりの総合優勝達成など、「ADVAN」「GEOLANDAR」の優れた走行性能を日本、海外のレースで示すことが出来ました。

 タイヤ生産財のうち、OHT事業においては2016年にATG、2023年にTWS、本年2月にGoodyear社のOTR事業のM&Aを完了したことで、当社のタイヤ消費財とタイヤ生産財の比率は市場と同じ1:1となりました。また、2025年5月にルーマニアにおいて、旧Euro Tireの閉鎖工場の固定資産を取得しました。
 買収したGoodyear社のOTR事業の生産拠点移管先の一つとして取得し、今後の鉱山・建設用車両向けタイヤの増産に向け活用することで、さらなる市場地位向上と競争力強化を図ります。
 TBR(トラック・バス用タイヤ)事業においては、商品ラインアップ拡充と供給・販売体制の強化を行っており、欧州を日本・北米に次ぐ第三の市場として成長させるべく引き続き注力します。

 技術・生産戦略では、「次世代プレミアムカー新車装着タイヤ」については、先ほどご紹介したようなプレミアムカーの中でも特に高い性能や品質が求められる車種やハイグレードなEVなどへの新車納入を獲得していくため、新城南工場に新しい開発設備を導入し、タイヤの構造、材料、生産のそれぞれの要素における技術を融合させて、目標とする高い性能・特性を目指していきます。
 「抜本的コストダウン」については、2024年8月に2026年の原材料費・加工費削減の見込額として65億円を公表しましたが、現時点でその見込み額は165億円と大きく増加しています。原材料費の取組みについては、従来の調達先から間口を広げて、新興国のサプライヤーを積極的に選定しています。またその評価や採用プロセスにおいては、当社の厳しい品質基準を維持しながら、全部門での情報共有や進捗の見える化を図ることで、採用までのリードタイムを短縮し、当初想定していた効果を大きく前倒しで刈り取ることができています。
 加工費の取組みについても、フィリピンやタイ工場などにおける、各設備の生産サイズ数・生産品番変更の回数の最小化・変更時間の最短化を図り、既存設備の能力・稼働率を高めることで、ハイインチ品の生産能力増強を進めています。また、エネルギーコスト削減についても、太陽光発電やLPガスへの燃料転換を行い、順調に進捗しています。
 次に、「タイヤ開発スピードアップ」の進捗です。新商品開発のプロセスを見直し、複数の商品開発を大きなひとつのプロジェクトと位置付け、ベースとなる商品開発と同時に2つ目、3つ目の商品開発の土台となるプラットフォームの開発を行う新・開発モデルに取り組んでいます。
 現在、その開発は順調に進んでおり、2026年下期に一部の商品、2027年には大型商品が上市できる見通しとなっています。合わせて、2つ目、3つ目の商品開発の土台となる共通パーツの基礎開発も進めています。また、当社独自のAIフレームワークである「HAIColab(ハイコラボ)」の活用ですが、すでに開発の現場においては、必要不可欠なものとなっています。
 以前は金型検討と製作、その次に試作と検討、その評価を繰り返して、仕様を決定するまでに、何度もトライアンドエラーが必要でしたが、「HAIColab」の活用で、金型製作と試作、評価までを効率的に行うことができ、「リードタイムを最大で50%の削減」に向け順調に進んでいます。

 MB事業では引き続き事業基盤の改善を進めました。ホース配管事業ではメキシコの自動車用ホースアッセンブリー工場の拡張を発表し新建屋の立ち上げに着手しました。来年以降のさらなる成長に寄与させていきます。
 また、工業資材事業は安定収益化に注力した活動を進め、コンベヤベルトの国内・外での拡販が進みました。さらに、顧客への提供価値向上を実現すべくセンシング技術を活用したコンベヤベルトのトライアル納入を拡大しています。航空部品事業は選択と集中による改善効果もあり収益改善が進みました。

 サステナビリティの取り組みでは、温室効果ガス排出量の削減については、YーTWSを含め、2019年比で「2026年に30%」、「2030年に40%」を目標とし、「2050年のCO2排出量ネットゼロ」達成に向け継続して取り組んでいます。
 本年2月には日本ゼオン様と植物原料由来のエタノールから高効率でブタジエンを生成する技術の実証実験設備の建設を開始しました。2026年から稼働を開始し、ブタジエンの確保並びに量産に向けた各種データを収集していきます。
 また、第三者評価としての外部評価ではLGBTQ+など性的マイノリティに関する企業・団体の取組みを評価する「PRIDE指標2025」で2年連続最高評価の受賞、直近でもダイバーシティ&インクルージョンの取組みを評価する「D&I AWARD 2025」で2年連続最高評価の「ベストワークプレイス」に認定されました。
 また、当社は生産性向上・プロセス改革、DX人材の育成、クラウド技術を活用したグローバルでのIT基盤の整備など、グループ全体でDXを推進しており、今回経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定を取得しました。引き続き「YX2026」の達成と、企業価値向上へ向けて全社での取り組みを進めていきます。

 2025年度通期業績見通しは8月に公表値を上方修正しました。売上収益1兆2350億円、事業利益1530億円、営業利益1405億円、当期利益880億円を予定しています。最後まで気を引き締めて公表値達成に向け全社一丸となり取り組んでいきます。

 昨今の世界情勢は、「米国の関税政策」、「中東・ウクライナ情勢」等の国際秩序の不安定化が継続する見込みであり、引き続き警戒が必要な経営環境になるとみています。自動車産業に目をやると、EVの普及は充電インフラの課題やEV価格やエネルギー価格の問題で一部地域では伸び悩みの兆候も見られ、ハイブリッド車の再評価もあり、各国地域ごとに販売の構造変化が発生している状況です。これらの状況から地域別の状況に合わせた対応が求められると考えています。
 タイヤ事業としては、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、そしてOHTとすべての品種をカバーし、Tier1 Topメーカーに並ぶ品ラインアップを持つ総合タイヤメーカーの強みを活かしてビジネスの拡大を目指し、高付加価値品比率最大化を目指しブランド価値向上と拡販を進めます。
 MB事業は2026年に終了する「YX2026」後の期間に飛躍的な成長を実現すべく、引き続き事業基盤の強化を進めていきます。
 全体としても、「YX2026」で定めた計画をしっかりとやり抜き、「Hockey Stick Growth」(うなぎ昇りの成長)に努めます。
 最後に、今年も残すところ2週間弱となりました。来年の皆様のご健勝とご清栄を祈念するとともに、変わらぬご指導、ご鞭撻を頂きますよう、どうかよろしくお願いいたします。

清宮眞二社長

清宮眞二社長

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