東レは12月11日、ABS樹脂の帯電防止性能を大幅に向上させ、同社従来材比1/5となる表面抵抗率109Ω/sqの高制電ABS樹脂「トヨラックパレル」を開発したと発表した。
半導体や電子機器の製造現場など、超精密作業に用いる搬送資材(トレイやケース類)に同開発材を使用することで、微細な静電気の発生を抑え、異物やホコリによる製品破損や不良品の発生リスクを低減する。2026年度から顧客へのサンプルワークを開始し、さらなる研究開発を進めていく。
近年、半導体市場は急速な成長を続けており、製品の微細化・高集積化が進む中で、製造現場ではわずかな静電気でも製品の破損や歩留まり低下といった課題が発生している。そのため、製造工程の各段階で使用される搬送資材にも、従来以上に高い帯電防止性能が求められている。
また、工程内では内容物が確認できる透明ケースや、色分けによる識別が可能なカラーパーツへのニーズもあり、意匠性や良外観性も重要な要素となる。こうした背景から、従来は導電性フィラーを配合した制電ABS樹脂が主に使用されてきたが、帯電防止効果の持続性や成形品外観、カラーバリエーション対応などに制約があり、こうした課題を同時に解決できる新たな素材が求められていた。
同社は、ABS樹脂中に制電ポリマーの連続層ネットワークを形成させることで帯電防止性を付与した、持続型制電ABS樹脂「トヨラックパレル」を上市し、半導体製造工程向けにも多く採用されてきた。今回の開発材は、制電ポリマーの分子構造設計の改良と、独自のポリマーアロイ技術によるミクロ単位での連続層制御を実現したことで、従来材の1/5以下となる表面抵抗率109Ω/sqを達成している。これにより、「トヨラックパレル」の高制電タイプとしてラインナップを更に拡充し、従来以上に幅広い用途や、より厳しい高制電要求にも対応可能となった。
同社は、「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」そして「ナノテクノロジー」の4つのコア技術を駆使して、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでいく。
2025年12月15日
