住友理工が新製品開発 壁倍率5・0倍の高耐力制震システム

2025年12月08日

ゴムタイムス社

 住友理工は12月4日、業界トップクラス、国土交通大臣認定「壁倍率5・0倍」の新製品「高耐力制震システム(仮称)」を開発したと発表した。
 新製品は、同社が20年以上にわたる研究開発活動で培った技術を生かした高性能摩擦材料を活用している。
 同材料は以下2つの特長がある。1点目は、温度依存性が低い点となる。温度による性能の変化が極めて小さく、広範な温度範囲(0℃~40℃)で、安定した性能を発揮する。温度変化の影響を受け難いため、設置地域や場所に関わらず、使用可能となる。
 2点目は、速度依存性が小さい点となる。地震による衝撃が速く伝わる、遅く伝わる、いずれの場合も、安定した性能を維持する。この特性により、短時間で強い揺れが発生する直下型地震にも、長時間にわたり強い揺れが発生する海溝型地震、両方に性能を発揮する。
 同材料の活用により、業界トップクラスの国土交通大臣認定「壁倍率5・0倍」を取得し、制震機能も向上している。なお、同製品の一般販売開始は2026年秋を予定しており、主に在来軸組工法住宅への導入を目指している。
 同社は自動車用品事業で培った高分子材料技術を応用し、2009年より木造住宅用TRCダンパーの販売を開始し、これまでに国内外で7万棟以上の住宅に設置されている。
 2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震での被災地域において、同社TRCダンパー採用住宅1035棟のうち、全壊・半壊に該当する住宅は確認されなかった。
 今年3月に内閣府より公表された「南海トラフ地震の新しい被害想定と実施すべき防災対策」では、最新の科学的知見に基づき、最大クラスの地震・津波が発生した場合、甚大な被害の発生が想定され、事前の防災対策の重要性が改めて提言されている。
 さらに環境面においては、2025年の建築基準法改定に伴い、環境対応の重要性が増加し、ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)の普及が進んでいる。これにより、太陽光発電装置や断熱材の使用が増え、建物の総重量が増大し、制震システムにも地震に対する耐力負担が一層求められている。同社は、このような災害対策の必要性や市場変化を受け、同製品の開発に至った。
 同社グループは、経営Vision「2029年住友理工グループVision」にて2029年のありたい姿を「理工のチカラを起点に 社会課題の解決に向けてソリューションを提供し続けるリーディングカンパニー」と設定している。地震をはじめとする自然災害に対し、同社グループの技術力を進化させ、安全・安心の提供に貢献していく。

高耐力制震システム(仮称)

高耐力制震システム(仮称)

高性能摩擦材を使用した制震ダンパー

高性能摩擦材を使用した制震ダンパー

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