島津製作所は12月3日、京都フュージョニアリングと共同で核融合発電施設向けターボ分子ポンプの試作機を開発したと発表した。
核融合(フュージョン)は、トリチウム(三重水素)や重水素などの原子核同士を融合させ、莫大なエネルギーを生み出す技術となる。太陽内部で起きる現象を再現するので「地上の太陽」とも呼ばれている。
「核融合炉で反応しなかったトリチウムや重水素の回収・再利用」や「炉内を高真空状態に維持」など核融合発電施設(フュージョンエネルギープラント)の様々な工程で、TMPなどによる真空技術が求められる。TMPの試作機は、京都フュージョニアリングらがカナダで建設中の統合試験プラント「UNITYー2」で性能試験を実施するとともに、京都フュージョニアリングが核融合発電関連の企業や研究機関へ供給していく。
今回開発したTMP試作機は、トリチウム環境下での長期の連続安定運転を想定しており、トリチウムによる潤滑油(玉軸受型で使用)の劣化リスクを避けるため、ポンプ内の回転体を磁力で浮かせて非接触で支持する磁気軸受型を採用している。また、ポンプ内部はトリチウム暴露による劣化を防止する素材を用いた。トリチウムや重水素のような軽いガスにも優れた排気能力を発揮する機構を備えている。
核融合発電施設の安定稼働には、絶え間ない燃料供給が必要となる。そのため、燃料であるトリチウムなどを炉心から排気・分離・循環する技術が欠かせない。京都フュージョニアリングは、この技術を「フュージョン燃料サイクルシステム」として世界に先駆けて開発を進めている。同システムでは、燃料であるトリチウムや重水素、核融合反応により生成されるヘリウムなどの混合ガスを回収、精製、再燃料化するプロセスにおいて、放射性物質であるトリチウム耐性を有する特殊なTMPをはじめとするフュージョンエネルギープラント向け真空ポンプが必要となる。
産業用TMPで高い世界シェアを持つ同社とフュージョンエネルギー分野の知見を持つ京都フュージョニアリングは、核融合発電施設専用TMPの研究開発に取り組んできた。同社は、各種TMPおよび分析計測機器など多種多様な製品・技術を通じて、未来のエネルギー源である核融合発電の社会実装に貢献していく。
2025年12月05日

