旭化成は11月7日、森林由来Jークレジット創出支援システムを開発したことを発表した。本システムは、宮崎県延岡市における森林由来Jークレジット創出において試験的に活用され、同市の申請業務の作業量を約90%削減することに成功した。
森林由来Jークレジットは、適切な森林管理によって生じるCO2吸収量を「環境価値」として評価し、クレジット(排出権)として国が認証する制度である。クレジットを購入した企業等は自社のCO2排出量の一部をオフセット(相殺)できる。また、クレジットの売却益は森林管理の資金源として、森林の適切な管理や保全に活用することができる。
日本は国土の約7割を森林が占める森林大国である一方、管理の担い手不足や高齢化により森林荒廃が進み、土砂災害や生物多様性の喪失といった課題が顕在化している。森林クレジットは、こうした森林を守り活用する有力な仕組みであるものの、これまでのクレジット創出の過程では、森林簿や森林計画図といった各種データの収集、候補地の選定、吸収量の算定などの作業が必要であり、申請手続きに多大な時間と労力がかかるとともに、専門知識がなければ認証取得が困難という課題があった。
同社は、同社発祥の地であり、多くの事業を展開する延岡市への地域貢献の一環として、2023年より、延岡市や延岡地区森林組合などと連携し、「森林由来Jークレジット推進協議会」において、延岡市の市有林を活用した森林クレジット創出に取り組んできた。スギ素材生産量日本一を誇る宮崎県の中でも、延岡市は最大の森林面積を有しており、豊富な森林資源を活かした新たな価値創出の可能性を模索してきた。以前、市単独で市有林を活用した森林クレジット創出に取り組んだものの、作業負担の大きさや複雑さから、産官連携による協議会での取り組みを開始した。
そうした課題解決のため、同社はデータ管理や自動化のノウハウを活かし、森林クレジットの申請手続きを効率化するシステムを開発した。本システムでは、都道府県、市町村、森林組合の持つ情報をデータベース化することで、上記の申請手続きを大幅に効率化し、従来は1・5~3ヵ月要していた作業を、約4~5日で完了できるようになった。これにより、専門知識がなくても短時間で森林クレジットの申請が可能になる。これまで課題となっていた申請作業の負担を軽減することで、森林クレジットの活用拡大が期待できる。森林クレジットの活用により、森林が資源として定量的に評価・価値化されることで、適切な森林管理が進み、CO2吸収量の増大、環境保全や防災、地域経済の活性化が期待できる。
本システムの活用により、延岡市においてクレジット申請のための業務量を約90%削減することに成功し、低コストでの森林クレジット調達が実現した。
