ダイセルは10月9日、キビテクおよびクシナダ機巧と2022年から行っていた五感点検の強化と遠隔操作による在宅化の実現に向けた共同研究の成果を用いた点検システムの実用化を目指し、2025年12月から同社網干工場の製造設備で実証試験を開始すると発表した。
今回の実証試験では、キビテクのキーテクノロジーである遠隔制御システム技術、およびクシナダ機巧が有するセンサーやカメラを使った視覚認識機能の機械化技術を用いて、人が行う五感センシングのデータを自律的に運用されるロボットで取得し解析する仕組みを構築し、製造設備の日常点検・メンテナンス作業における五感点検の強化と、遠隔操作による点検業務の在宅化での作業者の安全確保を検証する。
この技術は障がい者やベテラン技能を持つ高齢者の雇用促進への寄与を目指している。これは同社のサステナブル経営方針における「働く人の幸せ(Sustainable People)」の実現に向けた具体的な取り組みの一つとなる。
これまでの共同研究の成果をまとめると、まず「五感点検の強化」研究では、化学プラントにおける各計器類の目視での確認や回転機器の異音、振動の確認など、日常点検・メンテナンス作業を分析し、データを収集する各種センサーの選定と、機械学習による正常・異常推論アルゴリズムを導くAIを設計し、それらを搭載した機械装置(固定式・移動式)を開発した。これにより、五感点検のスピードや精度を向上させる。また、データ蓄積により人のノウハウの蓄積に繋げていく。
さらに「遠隔操作による在宅化の実現」研究では、これまで人が現場に赴いて行っていた異常原因診断のロジックをシステムに蓄積し、ベテランのノウハウを体系化した。このデータを元にAIが導く推論アルゴリズムによって、設備異常を検知した際の人の判断を支援する仕組みを開発し、同社網干工場に試験的に実装した。また、化学プラントの運転状況のデータを収集する各種センサーを搭載した機械装置(固定式・移動式)には、ロボット要素技術統合プラットフォームHATSを搭載し、AIによる自律的なロボットの運用を実現した。これらにより、人が現場に行かずとも、遠隔地から適切な点検・管理ができるシステムを開発した。
2025年10月14日

