新技術体系「シンク」を発表 TOYO TIREが記者会見

2025年10月14日

ゴムタイムス社

 TOYO TIREは10月2日、新たな技術体系「THiiiNK(シンク)」を発表し、本社にて記者会見を開催した。 

 会見には清水隆史代表取締役社長&CEOをはじめ、守屋学取締役執行役員・技術統括部門管掌、大阪大学大学院の藤田喜久雄教授らが出席し、同社の次世代技術戦略について説明が行われた。

 清水社長は、2027年に稼働を予定しているセルビアのR&Dセンターを中心とした新たな研究開発体制の構築に触れ、グローバル展開を見据えた技術革新の方向性を示した。続いて守屋氏が登壇し、シンクの概念と3つの技術について詳しく紹介した。

 シンクは、同社が長年にわたり培ってきた技術の中から、「Nano Balance Technology」による材料技術、「TーMODE」などを活用したシミュレーション技術、そして意匠性と機能性の両立を可能にする設計技術によるデザイン技術という3つの分野を、次世代のタイヤづくりにおける中核技術として位置づけ、それらを統合的に体系化したものである。

 この技術体系の名称に含まれる3つの「i」は、革新(innovate)、統合(integrate)、刺激(inspire)を意味し、タイヤ性能の高度なバランスとユーザーに感動や驚きをもたらす製品づくりを目指す姿勢を象徴している。小文字の「i」には、技術体系を育て、進化させていくという意志が込められているという。

 材料技術の分野では、ナノスケールでの設計を可能にする「Nano Balance Technology」を活用し、環境性能と安全性能を両立させた乗用車用タイヤや、燃費向上と環境負荷低減に貢献するトラック・バス用タイヤの開発を進めている。分子レベルでの観察・予測・機能創造・精密制御を通じて、理想的なゴム材料の設計を実現している点が特徴である。

 シミュレーション技術については、1987年に国内タイヤメーカーとして初めてスーパーコンピューターを導入して以来、継続的に最新機種への更新を重ねてきた。2000年にはドライビングシミュレーションとタイヤシミュレーションを融合した「Tーmode」を発表し、2019年にはAI技術を統合した新「TーMODE」へと進化。設計精度とスピードを飛躍的に向上させ、複雑な性能要件に対応する体制を確立した。また、空力シミュレーション技術を活用することで、タイヤのバットレス部においてデザイン性と空気抵抗の低減を両立させるなど、タイヤ・車両の空気解析も力を入れている。さらに、最新鋭スーパーコンピューターの導入により、架橋形態の違いによる機械的特性の差異を短時間で判別することが可能となった。

 デザイン技術においては、意匠性と機能性の両立を追求する設計コンセプトを掲げている。見た目の美しさだけでなく、タイヤに求められる多様な機能的価値を備えた意匠設計を目指しており、大阪大学大学院工学研究科の藤田喜久雄教授、矢地謙太郎准教授、野間口大准教授、早稲田大学大学院情報生産システム研究科の山﨑慎太郎教授との共同研究を通じて、「データ駆動型最適化技術」の開発を進めている。この技術の最大の特長は、機能性と意匠性を総合評価した多様なトレッドパターン候補を一括で可視化し、設計者が総合的な判断を行える枠組みを構築した点にある。これまで蓄積してきた設計ノウハウをデータとして可視化することで、デザイン品質の向上と開発スピードの加速を実現している。

 守屋氏は会見の中で、「3つの分野のコア技術を体系化したシンクは、高性能・デザイン・次世代のライフスタイルに対応する省資源を効率的に実現するための基軸となる」と述べ、今後開発されるすべての製品にこの技術体系を適用していく方針を明らかにした。シンクは、設計プロセスの効率化と商品価値の最大化を目指す指針として、同社の技術戦略において中心的な役割を担うことになる。

 記者会見終了後には、同社タイヤの特設展示会場およびタイヤ技術センターの施設見学が行われ、続いて藤田教授による「機能性と意匠性を兼備するトレッドパターンに向けたデータ駆動型最適化計算による設計法」に関する講演会が実施された。

清水社長

守屋技術統括部門管掌

藤田大阪大学大学院教授

 

全文:約1750文字

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