日本触媒とNTTコミュニケーションズは、プラントの自動運転を実現する NTT Comの「AI Autopilot System」を活用し、これまで困難とされてきた状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転に成功した。
一般に、温度、圧力、濃度など状態が絶えず変化する化学品の製造を行うプラントを運転するには、豊富な知識と経験が必要で、自動運転は困難とされている。このたび自動運転に成功した化学品製造工程は、化学品の純度を高めるための連続蒸留工程で、流入する反応液の組成が、流出する留出液の再利用量や組成によって変化するうえ、天候などの外部影響も受ける。このため、熟練の運転員が高い集中力をもって常時手動で操作する必要があった。安定稼働を継続するためには技術継承が重要な課題で、運転員の育成には多大な時間がかかっている。
両社は、連続蒸留工程の運転データと運転員の操作履歴、運転員が蓄積してきた運転ノウハウを学習させたAIモデルを構築した。従来、NTT Comが提供する同システムは状態があまり変化しない化学プラントの自動運転のみ実現できていたが、同システムに学習済みAIモデルを組み込むことで状態が複雑に変化する連続蒸留工程の自動運転を実現した。
連続蒸留工程では温度制御が重要となる。温度制御が正しく行われているかは、連続蒸留工程から留出する単位時間あたりの流出液量で評価。留出液は、連続蒸留工程から流出するだけでなく、断続的に一部再利用されるため、液面計で計測する理想的な留出液面の高さ(理想液面) は時々刻々と変化するが、学習済みAIモデルを組み込むことで、各時間における液面計の実測値と理想液面の誤差が手動操作時は平均2・38%であったものが、AIによる運転時は平均2・06%になった。この精度は熟練運転員による手動操作時と比較すると13・5%の改善となり、手動操作と同等以上の運転品質を実現できることを確認した。
同システムを活用することで、運転員が液面計を監視し、理想液面になるように温度を制御する負荷を軽減することができた。さらに、作業が標準化され、技能継承にかかる時間が削減されることが期待できる。日本触媒では、この取り組みを工場内の他のプラントへ水平展開することで、運転員の負荷軽減と技能継承プロセスの最適化を通してDXによる変革を引き続き推進していく。
2025年02月19日