出光興産、燃料転換2割強達成 ナフサ分解炉アンモニア燃焼

2024年03月20日

ゴムタイムス社

 出光興産は、徳山事業所の商業用ナフサ分解炉等でアンモニアを燃料として使用するための実証を2月6日~8日に実施した。今回の実証では、既存の燃料の2割超をアンモニアに切り替えて操業し、アンモニア燃焼が可能であることを確認した。商業用ナフサ分解炉での燃料アンモニアの燃焼は国内初であり、世界でも先進的な試みだ。同社は2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて燃料アンモニアなどの次世代のエネルギーの社会実装に取り組んでいる。23年4月には「石油供給構造高度化事業費補助金(次世代燃料安定供給のためのトランジション促進事業のうち、化石燃料供給事業再構築支援事業)」の採択を受け、徳山事業所でアンモニアの貯蔵タンクや配管などの中間供給設備およびナフサ分解炉等におけるアンモニア燃焼設備の設置工事を、IHIおよびIHIプラントの協力を得て進めてきた。同年2月に本設備が完成し、同月、国内初となるアンモニア燃焼の実証を行った。
 脱炭素社会の実現へ向け、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアは、エネルギーキャリアや発電・工業ボイラー用の新燃料として注目されている。しかし、アンモニアは化石燃料と比較して発熱量が低く、着火性も悪いことから燃焼性に劣ると言われる。また、燃焼時に発生する窒素酸化物の抑制にも取り組む必要があり、国内では試験用設備などでアンモニアの燃焼技術開発が行われてきた。
 一方、工場などの操業中の大規模化学プラント等でのアンモニア燃焼は、操業へのリスクがあることや設備整備に大きな投資が必要になることなどから、これまで行われたことはなかった。今回、操業中のプラントを利用したアンモニアの燃焼実証を燃焼排気ガス中の窒素酸化物を低減させるための脱硝設備を装備していないナフサ分解炉で実施し、アンモニア専用バーナーの採用や燃焼制御等により、窒素酸化物が環境規制値以下であることを確認した。また、化石燃料と遜色ない燃焼性を確認するとともに、操業への影響もないことが確認できた。
 実証で得られた結果は、国内の化学産業からのCO2排出量の多くを占めるナフサ分解炉への適用にも大きく貢献することが期待できる。今後も同設備を活用して、アンモニア燃料の実用化に向けたデータやノウハウを蓄積し、化学分野等の工業用加熱炉へのアンモニア燃料への転換ソリューションの提供を目指す。

アンモニアの中間供給設備

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