専門技術団体に訊く12 団体インタビュー 塩化ビニル管・継手協会 鈴木謙次郎専務理事

2023年12月15日

ゴムタイムス社

専門技術団体に訊く12 団体インタビュー

塩化ビニル管・継手協会 鈴木謙次郎専務理事


廃塩ビ管・継手のリサイクルシステムを構築
パイプからパイプへのマテリアルリサイクルへ

 塩化ビニル管・継手協会は、「硬質塩化ビニル管、同継手及びマスマンホールの普及並びにこれらの製品に係る環境・リサイクル活動を通じて、業界の健全な発展を促進するとともに、安心、安全で持続可能な国民生活の実現に資する社会基盤の整備に寄与すること」を目的に活動を行っています。同協会の副会長兼専務理事の鈴木謙次郎氏に沿革や活動内容などについて尋ねました。

◆協会の概要について
 当協会は、1954年(昭和29年)に会員5社から構成される「塩化ビニル管協会」として発足。その後、1962年(昭和37年)には「塩ビ継手協会」と合併し、「塩化ビニル管・継手協会」となりました。更に、昨年2022年(令和4年)5月に、関連する業界団体のより効率的かつ効果的な事業運営を目指すべく、塩化ビニル管・継手協会、プラスチック・マスマンホール協会、プラスチックリブパイプ協会及びC.C.BOX管路システム研究会の4団体が統合し、新生「 塩化ビニル管・継手協会」として出発しました。
 当協会の会員は、塩化ビニル管・継手、マスマンホールを製造する正会員9社、塩化ビニル管・継手の周辺機器などを取り扱う一般賛助会員は5社、リサイクルに関係するリサイクル賛助会員は7社・1団体で構成されています。

◆主な事業活動を教えてください
 当協会の事業は、①普及・広報事業、②環境・リサイクル事業、③技術調査・規格事業の3つの柱で構成されています。

◆普及・広報の取り組みは
 会員個社では働きかけが難しい国や地方自治体等に対する普及・広報活動を中心に行っています。特に、昨今水道管路の更新が全国的に急務である中、事業主体である自治体を訪問し、管路整備に関する課題等を聴取するとともに、塩ビ管の経済性、施工容易性等のPRを行っています。
 また、最近特に力を入れているのが、電力用ケーブル保護管(無電柱化)の普及です。無電柱化は道路管理者である国や地方自治体が事業主体であり、国土交通省では、無電柱化を進めるため、工事の低コスト化とスピードアップを課題として掲げています。当協会では、旧来のCCVP管に代わるより低廉なECVP管(Economical Electric C.c.box Vinyl Pipe)を開発、東京都をはじめ関東エリアではすでに数多くの供給実績がありますが、全国的な普及に向け、各地方整備局や自治体、電力会社などにきめこまかく働きかけています。
 この他、普及・広報事業では各種展示会への参加として、毎年下水道展、水道展に出展しており、当協会の取組を紹介しています。
 更に、自治体や施工事業者の皆さんに向けて、関連技術研修会や講習会も実施しています。

◆環境・リサイクル事業について。
 プラスチック資源循環の推進、カーボンニュートラルの実現など業界をめぐる様々な環境課題にも積極的に取り組んでいます。当協会は、廃塩ビ管・継手の受入からリサイクル製品の生産・販売までのリサイクルシステムを構築し、その中でパイプからパイプへのマテリアルリサイクルとして、リサイクル三層管の普及に注力しています。
 塩化ビニル管は過半が塩素から構成されており、他の石油由来のプラスチック製品と比較すると環境負荷の点から優れた素材です。また、他の管種と比較して軽量であり、寿命が長期である点から優れた環境性能を有しています。更に、リサイクル三層管は、原料樹脂全体の30%以上をリサイクル材が占めるため、よりCO2排出及びエネルギー消費の削減を実現する製品だと言えます。
 リサイクル三層管はグリーン購入法に基づき特定調達品目に指定されており、独立行政法人や、都市再生機構(UR都市機構)、東京都をはじめとする多くの自治体の公営住宅や学校、警察といった公共建築物において採用実績があります。ただし、近年出荷量は減少傾向にあり、主要顧客である自治体に対して一層の普及・広報活動展開しています。
 この他、近年環境に配慮した製品・サービスが市場において評価・選好される傾向にある中、現在当協会では、塩ビ管の原料調達から製造に係るCO2排出量やエネルギー消費量といった環境負荷の見える化に取り組んでおり、今後結果を市場において訴求していきたいと考えています。

◆技術調査・規格事業について教えてください。
 下水道用塩化ビニル管のライフサイクルを通じた経済性を訴求していくため、長期寿命検証に取り組んでいます。
 現在の標準耐用年数50年を大きく上回る100年寿命について、これまで協会に蓄積された調査結果等データを活用しつつ、外圧強度等様々な観点から検証しているところです。
 また、規格等の適切な管理も当協会では重要な事業のひとつです。所管製品に係るJIS、水道協会規格及び下水道協会規格並びに当協会の独自規格を適切に見直し、管理しています。

◆今後の課題について
 上述しましたが、環境課題に対して業界として一層の取組が求められています。
 現在、国連においてプラスチック汚染防止に関する国際条約(仮)の締結に向けた交渉が行われており、塩ビを含むプラスチック製品の利用規制に関する議論も行われています。かかる状況の下、当協会としては、所管製品の生産・消費に係る環境への影響を正しく管理すべく、引き続きリサイクル協力会社(廃塩ビ管の中間処理事業者)と緊密に連携しつつ、リサイクル三層管の普及をはじめとする協会リサイクル関連事業を着実に実施していきます。
 また、近年全国各地で地震や豪雨などの災害が頻発している中、災害に強い製品の供給を通じて、より強靭で安心・安全な社会インフラ整備に向けて微力ながら貢献していきます。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。