専門技術団体に訊く9 団体インタビュー 日本合成樹脂技術協会 青葉堯会長

2023年03月02日

ゴムタイムス社

専門技術団体に訊く9 団体インタビュー
日本合成樹脂技術協会 青葉堯会長

プラスチック技術の更なる普及と向上を目指す
基礎セミナーなど教育講座に特に力を入れる

一般社団法人日本合成樹脂技術協会(青葉堯会長)は、日本で唯一のプラスチック総合技術団体として創設され、プラスチック業界の法人や個人によって構成される全国規模の団体です。同協会の青葉会長に、同協会の沿革やこれまでの活動と今後の課題などについて尋ねました。

◆沿革を教えてください 

 当協会は、日本のプラスチック産業の成りたちに大きく関わっています。沿革を振り返りますと、1945年の敗戦で国土は荒廃しましたが、これからの日本の新しい産業として、地方に残っていた蚕糸試験場が、絹糸に代わりプラスチックの拠点に置き換わっていきました。それに呼応して、1947年にプラスチック技術団体として唯一の全国組織である「合成樹脂工業技術研究会」が設立されました。その事業理念は、プラスチック技術の普及と向上です。この理念は今でも変わっていません。
 また、当協会は、世界のプラスチック生産量が急増した1960年に、通商産業省認可による社団法人日本合成樹脂技術協会となりました。同年、東京都の協力を得て東京都中小企業会館に入館し、常設展示場と研修室のあるプラスチックセンターを設置しました。
 2013年に一般社団法人日本合成樹脂技術協会に移行しました。そのほか、成形加工学会の事務局を当協会で行っていた時期もありました。

◆協会の具体的な活動について

 プラスチック技術の普及と向上の具体的な活動として、設立した頃は、技術養成講座をはじめ技術講演会、見本市、技術雑誌の発行を行っていました。現在も設立76年の伝統を生かし、同様の事業を行っています。
 技術情報の広報として、設立当初に月刊誌「合成樹脂」を創刊した後、1949年に情報紙「プラスチックスタイムス」も創刊しました。当時はプラスチック業界の発展に貢献すべく、編集作業に力も入れていました。そして、1999年に合成樹脂に代わり月刊誌「プラスチックインフォワールド」を創刊、2010年には、「プラスチックインフォワールド」を休刊し、「プラスチックスタイムス」は月刊紙として復刊しました。
 プラスチックに関する知識や情報の普及という公益目的としており、「プラスチックスタイムス」は無料配布しています。プラスチック業界に向けて情報発信に今でも力を入れています。

月刊紙「プラスチックスタイムス」情報発信

月刊紙「プラスチックスタイムス」情報発信

◆教育講座について

 当協会は技術情報の広報と並んで、教育講座に特に力を入れて取り組んでいます。
 1949年に「プラスチック基礎セミナー」を開講し、それが今も継続して開催している「「プラスチック基礎セミナー」の元祖となっています。現在の教育講座には、「プラスチック基礎セミナー」、「プラスチック技術セミナー」、「プラスチック特別セミナー」、「プラスチック技術者養成のための通信教育」があります。受講者は大企業の若手社員をはじめ、中小企業の経営者や中堅社員・若手社員など多岐にわたっています。
 基礎セミナーには「プラスチック初等講座」、「射出成形技術基本講座」、「押出成形技術基礎講座」、「射出成形金型基礎講座」、「ブロー成形技術基礎講座」などがあります。基礎セミナーは、プラスチックの基礎を網羅しているため、最も人気のあるセミナーです。基礎から実践まで短時間で習得できる内容となっています。
 技術セミナーは、各企業の中堅社員が現場の実践で役立つ内容を多く手掛けており、通信教育や基礎セミナーよりもさらに深く学びたい方にお勧めのセミナーです。
 通信教育は、セミナーに続いて長い歴史を持つ教育講座のひとつで、セミナーに参加することが難しいという各企業の要望により開講しました。経験豊富なベテラン専任講師陣がオリジナルテキストで添削指導を行います。期間は6ヵ月で、基礎から応用まで自分のペースで、初めてプラスチックに携わる方はもちろん、再学習を志す方にも適した内容となっています。講座修了後も、テキストを繰り返しひも解くことにより、復習することができまるという利点があります。
 いずれの教育講座も、人材育成や新人教育に時間が割けない各企業にとって大変有意義なものですので、是非活用していただきたいと思っております。

教育講座に注力

教育講座に注力

◆今後の展開について

 セミナーというと、どうしても密な会場に集まるというイメージが強いかもしれませんが、現在は、コロナ禍が継続する中で参加者のニーズに合わせて、会場受講とオンライン受講のハイブリット形式でセミナーを開催しています。伝統と歴史のある、かつ業界を代表するベテラン講師陣による、短期間・短時間に集中的にかつ体系的なプラスチック技術を習得できる当協会の各種教育講座を一層普及させていきたいと考えております。
 また、今後、これまでの通信講座のスタイルを再度見直し、受講者が参加しやすいスタイルに変更することで、受講者を増やしていきたいと思っています。
 日本ではプラスチックの3つのリサイクル(マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル)の実用化に向けて動き、海洋汚染や地球環境の対策を積極的に進めています。このようなプラスチック業界の動向の中、当協会も微力ながら、設立当時から続くプラスチック技術の普及と向上という当協会の理念の元、より一層のプラスチック技術の向上支援の一助になりたいと思っております。

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。

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