積水化学と東海カーボンが パートナーシップ締結

2023年04月24日

ゴムタイムス社

 積水化学工業と東海カーボンは4月20日、二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)へ高効率で変換する技術(ケミカルルーピング反応技術)によって生成したCOを用いた、各種炭素素材・製品の製造技術(CCU)及びCO2を固体炭素として回収・貯留する技術(CCS)の実用化を目指し、4月18日、パートナーシップを締結したと発表した。
 この技術が実現すれば、化石資源への依存度を低減し、各種炭素製品生産時の脱炭素化へ貢献すること、CCSの新たな手法の一つとなることが期待される。
 気候変動課題が深刻化し、世界中で温室効果ガスであるCO2を大幅に削減することが求められている。そのようななかで、CO2を燃料や化学製品に変換して活用するCCUや、CO2を回収・貯留するCCSがCO2の大気中への放出を削減する技術として注目されている。
 また、炭素製品は、自動車や建築、機械、電子部品などさまざまな用途で使われ、生活を豊かにしている素材だが、原料の多くは化石由来の物質であり、製造工程におけるCO2排出量も大きいため、グリーン化が大きな課題となっている。
 CO2を炭素に直接変換する技術は既にあるが、変換効率が低く、CCU実現のためには更なる技術開発が求められている。
 また、現在のCCSはCO2を地中や海底に直接貯留する方法が一般的だが、その貯蔵方法では圧力が必要となり貯留施設の立地に制約が生じる。今後拡大するCCSの需要に鑑みると、固体炭素としての貯留のような、立地の制約を受けず、圧力に依らない貯留形式の開発が望まれている。
 現在、積水化学は、ケミカルルーピング反応技術において、独自開発した触媒と反応プロセスによって、CO2を90%という高い転化率でCOに変換する革新的技術を開発している。
 東海カーボンは、100年以上にわたり培ってきた各種炭素素材・製品の製造・評価技術や設備を活かし、各種形態(固体、液体、気体)の原料を用いて、これに適した組成配合・製造方法により製品開発を行っている。
 両社の保有する技術を活用することで革新的な CCUS プロセスを実現することができると考えている。
 パートナーシップに基づく実施目標として、ケミカルルーピング反応技術により炭素製造に由来する排ガス中のCO2を一度COへ変換し、そのCOを炭素へさらに変換して炭素製品を製造するCCU技術と、CO2を直接貯蔵するのではなく、固体炭素として貯蔵する CCS技術の実現を目指す。
 炭素製造時に発生するCO2を削減することを目指すと同時に、前者は2段階に変換することで、CO2を炭素に直接変換する技術よりも高い変換効率を見込み、後者は圧力を利用する必要がなくなることで貯蔵場所を広げ、また、化学素材やエネルギーの備蓄になる。
 今後の展開としては、本パートナーシップにおいて環境負荷の優位性や経済性が認められれば、パイロットプロジェクトを進め、2030年を目途に商用化を目指す。
 炭素素材・製品製造時のCO2を削減し、CCUにより生活を豊かにする炭素という素材に変えるとともに、炭素製造時の排出CO2に限らず、幅広いCO2源のCCSによりCO2を排出削減し、世界の脱炭素化と資源循環に貢献する。
 積水化学グループは、長期ビジョン「Vision 2030」において、「Innovation for the Earth」をビジョンステートメントとして掲げ、イノベーションにより「サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、未来につづく安心を創造していく」ことを宣言し、脱炭素に資する新技術・新事業に取り組んでいる。これからも積水化学グループは、持続可能な社会の実現と積水化学グループの成長の両立を目指して社会課題解決に貢献し、ステークホルダーの方々に信頼される企業であり続けるための取り組みを進めていく。
 東海カーボングループでは、2030年に向けた長期ビジョンとして、「先端素材とソリューションで持続可能な社会の実現に貢献する」を掲げるとともに、2050年のカーボンニュートラルに向けて、各種施策に取り組んでいる。100年余に亘り、炭素を生業としてきた東海カーボングループにとって、CCU/CCSといった技術の実現は悲願とも言える課題となる。東海カーボングループ単独で出来ることには限界があるが、本パートナーシップを通じ、ステークホルダーの方々との「信頼の絆」をより強め、有意義な共創が可能となるよう、取り組んでいく。

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