年頭所感 日本ベルト工業会 松尾聡理事長

2023年01月03日

ゴムタイムス社

 謹んで新春のお慶びを申しあげますとともに、旧年中に賜りましたご厚誼に対し心より御礼申しあげます。
 令和5年の年頭にあたり、一言ご挨拶申しあげます。

 昨年の日本経済全体は、経済活動正常化に向けて行動制限緩和を一段と進めたことにより底堅く推移しましたが、我々ゴムベルト、樹脂ベルト産業界は、オミクロン感染再拡大や中国の大規模なロックダウンに伴う半導体他部材の供給制約のため、需要先である自動車、工作機械、鉄鋼産業の減産、インバウンド需要の縮小の影響を1年を通じて受けました。
 今年の日本経済は、行動制限がより緩和され景気回復が続くとの見方は変えないものの、欧米の景気後退懸念、ロシアによるウクライナ侵攻の事態の成り行き、中国経済の回復力の弱さなど外部環境の影響を受け続けると思われます。

 その結果、令和4年度の国内生産量は、ゴムベルト全体で20,810トン(前年比95%)、内需は15,314トン(同93%)、輸出は5,496トン(同101%)の見込みです。半導体他部品不足によりベルトの需要先である自動車産業、工作機械産業が減産し、その影響でそれらを重要先としている鉄鋼産業の減産があり、コンベヤベルト、伝動ベルト共に内需は前年割れでした。
 令和5年度のゴムベルト生産量予測は、20,347トン(前年見込比98%)としました。コロナ前令和1年比では83%と厳しい状況が続きます。内需は国内景気の底堅い回復を受け、15,549トン(同102%)、輸出は世界経済の低迷により4,799トン(同87%)です。
 コンベヤベルトの令和4年度の生産量は9,712トン(前年比95%)の見込みです。その内訳は、内需が6,479トン(同94%)、輸出が3,233トン(同99%)です。内需は主力需要先の鉄鋼メーカー等の需要が自動車産業の減産の影響を受けて粗鋼生産量が減少しベルト交換需要も減少しました。輸出は鉱山需要が好調でしたが、昨年10月以降より世界経済の低迷により大幅に落ち込みました。
 令和5年度の需要予測は、9,255トン(前年見込比95%)としました。その内訳は、内需が6,636トン(同102%)、輸出は2,618トン(同81%)の見込みです。内需は鉄鋼産業他主力需要先が回復し前年比100%を確保する見込みです。輸出は海外景気の低迷を受けて鉱山需要が落ち込む見通しです。

 伝動ベルトの令和4年度の生産量は11,098トン(前年比95%)の見込みです。その内訳は、内需が8,835トン(同93%)、輸出が2,263トン(同105%)です。内需は主力需要先である自動車産業、工作機械産業の半導体他部材不足による減産の影響を1年を通じて受けました。輸出は海外経済の復調により100%超えでした。
 令和5年度の需要予測は11,093トン(前年見込比100%)としました。その内訳は、内需が8,913トン(同101%)、輸出が2,180トン(同96%)です。内需は主力需要先である自動車産業、工作機械産業の部材不足が解消し前年比100%を確保する見込みです。輸出は欧米及び中国経済の減速により前年より落ち込みます。内需輸出合計ではコロナ前令和1年比101%の見込みです。

 樹脂ベルトの令和4年度生産量は約113万㎡(前年比101%)の見込みです。その内訳は、内需が約105万㎡(同101%)、輸出が約7.8万㎡(同104%)です。行動制限が緩和されてきたとはいえ、食品分野は外食やお土産向けはコロナの影響で苦戦しましたが、コンビニやスーパーを中心とした中食向けは比較的好調でした。ネット通販の活況や個包装の拡がりにより大型物流倉庫新設等物流分野は好調を持続し、また、段ボール需要が増加し、包装、紙工向けも好調でした。
 コロナ再拡大や半導体など部材不足により先行き不透明感がありますが、令和5年度の需要予測は、約116万㎡(前年見込比103%)と100万㎡の大台は確保できる見通しです。コロナ前令和1年比では96%と本格的回復はまだ先の見通しです。その内訳は内需が約108万㎡(同103%)、輸出が約8.2万㎡(同105%)です。物流分野、包装・紙工分野は好調を維持しますが、樹脂ベルトの令和1年超えにはインバウンド需要、外食産業の回復による食品分野全体での底上げが必要です。

 今後、欧米はインフレ抑制のための金融引き締めにより景気が減速し、中国もゼロコロナ政策が緩和されても労働力人口の減少ペース加速等により回復力は弱いものの、一方で日本では緩やかですが景気回復していきます。また、ASEAN主要5カ国(インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム)やインドなどアジア新興国の景気も回復傾向にあり、世界の成長センターとして期待できます。
 このような環境下、当日本ベルト工業会は、経済政策や需要先動向等を的確に把握しタイムリーなデータサービスを行う一方、ISOTC41のメンバーとして日本の考え方をISOに反映させ日本規格の国際化を推進する等、尚一層のベルト業界発展のため貢献してまいります。
 内外ともにこの1年が良い年となり、皆様がますますご発展されますことを心から祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

 

松尾聡理事長

松尾聡理事長

 

関連キーワード: ·

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー