三洋化成、肥料被覆材を開発 天然由来成分で構成

2022年12月05日

ゴムタイムス社

 三洋化成工業は12月1日、食用に適さないお米(非食用米)等を活用したバイオマスプラスチック「ライスレジン」を開発販売するバイオマスレジンホールディングス(バイオマスレジンHD)の生分解性樹脂「ネオリザ」を用い、得意とする界面制御技術により肥料成分の溶解速度を制御する機能(徐放性)を付与した生分解性の肥料被覆材を開発したと発表した。

 同被覆材は、主成分が天然由来の成分から構成されており、肥料成分溶出後の非生分解性プラスチック(被膜殻)の残存による土壌汚染や、河川や海洋への流出による汚染への対処が求められている緩効性肥料の課題解決につながるソリューションとして応用展開が期待されている。今後同社は、実用化に向けた検証を進め、同被覆材を通じて持続可能な農業の実現に貢献していく。

 緩効性肥料は、肥料成分の表面を被覆加工することで作物の生育に合わせて必要な量の肥料成分が溶出するように制御した肥料で、追肥の負担を軽減し、過剰な施肥や肥料成分の流出を抑制するなど、農業生産性の高度化と環境負荷の低減のために重要な役割を担っている。一方、現在の被覆材はそのほとんどがポリエチレンなどの石化由来のプラスチックであるため、肥料成分が溶出した後の被膜殻は土壌中に残留し、その一部は河川や海へ流出することで海洋プラスチック汚染につながることが懸念されていた。

 今回同社は、界面制御技術を駆使して肥料成分の溶出挙動を制御することにより、「ネオリザ」の高い生分解性を維持したまま緩効性肥料として必要な徐放性を付与した被覆材の開発に成功した。今後は同被覆材をベースに実証検証を重ねていき、2027年の実用化を目指す。

 緩効性肥料の被膜殻による海洋プラスチック汚染問題に対しては、全国農業協同組合連合会、全国複合肥料工業会、日本肥料アンモニア協会の3団体が2030年にはプラスチックを使用した被覆肥料に頼らない農業を目指した取り組みを推進するなど、農業界において生分解性素材等の開発が求められている。同社は、今回開発した生分解性の被覆材を通じて、環境負荷を低減しながら、持続可能な農業の実現に貢献していくとしている。

 

肥料のプロトタイプ

肥料のプロトタイプ

被覆肥料断面

被覆肥料断面

肥料成分の溶出挙動

肥料成分の溶出挙動

 

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