年頭所感 日本ゴム工業会 池田育嗣会長

2022年01月01日

ゴムタイムス社

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 2021年は世界を席巻していたコロナ禍の早期収束を期待して始まった1年であり、国内外でワクチン接種が始まったことを受けて経済の早期正常化が望まれましたが、一足先に経済が回復した欧米中に比べて我が国は出遅れ感が否めませんでした。それでも「K字回復」と言われたように、製造業である自動車や電機など大きく回復した業種もありました。

 こうした中でゴム産業は、最大の需要先である自動車の生産が、年央までは前年の落ち込みを取り戻す勢いを示したものの、その後半導体不足や東南アジアでの感染再拡大による部品供給の停滞により減産に追い込まれたため、第3四半期にはブレーキがかかりましたが、自動車生産の正常化に伴い今後は回復軌道に戻ると見込まれています。また、企業業績の改善を背景に設備投資も増加に転ずると予想されており、国内経済も徐々に回復しつつあります。
このような状況下、世界を見渡せば100年に一度の自動車業界大変革であるCASE、持続可能な世界を目指すSDGs、カーボンニュートラルなど環境課題に対する動きは止まることがありません。ゴム産業としては手綱を緩めることなく対応していかなければなりません。

 環境課題に対しては、当会はこれまで地球温暖化対策(低炭素社会実行計画)、廃棄物削減(循環型経済社会の構築)、VOC排出削減を含む化学物質対策などで自主行動計画を定め、目標の達成に向け、着実に進めてきました。中でも地球温暖化対策は現在の目標を2019年度に前倒しで達成しましたが、政府目標である2050年カーボンニュートラルへ対応するため、1月には2050年のカーボンニュートラルに向けた長期ビジョンを公表する予定です。これを実現していくためには、これまでの積み重ねだけでなく、ゴム工業会全体での新たな取り組みや発想が必要になってくると思いますが、引き続き環境委員会を中心に議論を継続して参ります。

 更に、昨年3月には当会が外国人実習制度の技能実習評価試験の実施機関に認定され、12月から評価試験をスタートしています。本年は、海外からの入国もより容易になると期待されており、多くの方に受検いただけるような制度にしていかねばと考えます。外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ、国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術、知識の開発途上国等への移転を図り経済発展を担う「人づくり」に協力するという国際貢献の一つであります。制度の活用により、送り出し国・実習生・実習受け入れ企業の3者がWIN・WINの関係となり、実習生を受け入れる職場や企業の活性化につながる制度になると考えています。

 また、国内外を含めたゴム製品等に関する標準化については、TC45国内審議委員会を中心として日本の優れたゴム製品、技術の優位性を確保する活動を継続しており、コロナ禍でも引き続きWEBにより国際会議へ対応しています。

 このようにコロナ禍の影響で活動に制約がある反面、様々な工夫により乗り越えつつあります。勉強会などではWEB開催により多くの方にご参加いただくなど、今後の運営の参考となることも増え、70周年の記念式典もWEB併用で1年遅れとなりましたが開催することができました。

 一方、足元の状況を見ると原材料や副資材の高騰、供給不足、物流の混乱、米中関係、行き過ぎた円安など企業の舵取りにとって逆風が続き、当会の中小企業景況調査でも先行きは厳しいとみる企業が増えています。大型の経済政策の効果を期待しつつも、最終的には自社における自助努力が欠かせません。アフターコロナにおいても、コロナ禍で培ってきたテレワーク、会議の開催方法などの新たなコミュニケーションのあり方や働き方改革などの地道な取組みが大いに役立つと思われます。

 また、素材としてのゴムは、持続可能な社会の構築に欠かすことができない素材であり、製品やゴム原材料の分子レベルでの分析・研究成果によって、その特性や魅力をさらに活かしていけば、需要先もまだまだ開けていくと考えます。

 本年は、コロナウイルスに対する対応が進み、世界経済が再び力強く動き始めることを期待し、引き続きゴムの特性を生かした「ものづくり」を核とし、未来を見据えた創意工夫を積み重ねることで更なる展望が開けていくものと確信しています。

年頭に当たり、会員各位の一層のご発展を祈念いたしますとともに、関係各位の一層のご支援、ご協力をお願い申し上げ、挨拶と致します。

池田育嗣会長

池田育嗣会長

 

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