窒化ケイ素添加による樹脂複合材料の高熱伝導特性

2021年03月09日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 多様な要求に対応する樹脂添加剤・フィラー活用法

窒化ケイ素添加による樹脂複合材料の高熱伝導特性

(研)産業技術総合研究所 嶋村彰紘

1. はじめに

 近年、電子回路の高密度化及び高性能化によりデバイスからの発熱は増大の一途をたどっており、部品の放熱性を高めることが製品の性能に大きく影響するため電子部品の放熱技術はその重要性が強く認識されている。電子部品の構成材料として用いられる樹脂材料は加工性や価格の面で優れている一方、樹脂材料の熱伝導率は極めて低い(0.2 ~0.3W/mK)。そこで、樹脂材料の絶縁性を維持しながら放熱性能を向上させる方法として絶縁性の高熱伝導セラミック粒子をフィラーとして樹脂と複合化することが行われている。これまでに、セラミックスフィラーとしてはシリカやアルミナが実用化されているが、さらなる放熱性能の向上が求められている。セラミックスの熱伝導は構成元素の格子振動によって熱が伝わるため,元素間の結合力が強く軽元素なものほど熱振動が効率的に伝わるため高熱伝導を示す。そのため、イオン結合性の高い酸化物よりも、共有結合性が高い非酸化物、例えば窒化物や炭化物が熱伝導率の高いセラミックとして用いられている。さらに、共有結合性の高いセラミックスの中でも比較的原子番号が小さなホウ素、アルミニウム、ケイ素を陽イオンとする窒化物である窒化ホウ素、窒化アルミニウム や窒化ケイ素は次世代のセラミックフィラーとして応用が進められている。また、非酸化物セラミックスの中でも窒化ホウ素と窒化アルミニウムはセラミックフィラーとしてこれまでに多くの研究例が報告されてきたが、窒化ホウ素はへき開性があり低い機械強度と、他のフィラー材料と比べて高い製造コストに課題があり、窒化アルミニウムは高い熱伝導率を有しているが、空気中の水分等で加水分解を起こすため耐水性に課題がある。窒化ケイ素は熱伝導率では窒化ホウ素や窒化アルミニウムよりも劣るものの、機械的特性や化学安定性に優れており、次世代のセラミックスフィラーとして高いポテンシャルを有している。我々は、これまでに窒化ケイ素をフィラー材料と注目し研究を進めてきた。
 本稿では、市販の窒化ケイ素フィラーを用いて窒化ケイ素複合材料を作製し、その熱伝導特性について評価をおこない、さらに、これまで開発を進めてきた窒化ケイ素フィラー凝集フィラーを用いた高熱伝導性窒化ケイ素複合基板について、これまでの研究内容と文献等で報告している内容をまとめて報告する。

2.  窒化ケイ素複合材料の熱伝導特性

 窒化ケイ素は一般的には2つの結晶構造を持つことが知られている。1つ目は低温安定相であるα 型窒化ケイ素と、高温安定相であるβ型窒化ケイ素である。この2種類の窒化ケイ素は異なる熱伝導率をもっており、理論的にはα型窒化ケイ素のa軸、c軸方向の熱伝導は105Wm-1K-1、225Wm-1K-1、であり、β型窒化ケイ素のa軸、c軸方向の熱伝導は170Wm-1K-1、450Wm-1K-1であると報告されており、β型窒化ケイ素の方が高い熱伝導率を示す1)。そこで、このようなα型、β型窒化ケイ素の違いが複合材料の熱伝導性能にどのように影響を与えるかについて、市販の窒化ケイ素粉末を用いて調査を行った2)。
 図1は作製したα型、β型窒化ケイ素コンポジットの熱伝導率を示す。用いた窒化ケイ素粉末は平均粒子径が3.5μmのα型窒化ケイ素(デンカ株式会社、SN-9、α相>90%、ボールミル処理により粒子径を調整)、β型窒平均粒子径が3.5μmのβ型窒化ケイ素(デンカ株式会社、SN-F1、β相>95%)を自転公転ミキサー混合装置をもちいて混合した後に、加熱プレス成形により複合材料を作製した。作製した複合材料の熱伝導率を見ると、充填量が50vol%までは窒化ケイ素の充填量を増加しても、複合材料の熱伝導率に顕著な変化は見られておらず、窒化ケイ素の結晶系(α型、β型)による影響はほとんど無いといえる。
 一方、窒化ケイ素充填量が50vol%以上では複合材料の熱伝導率は飛躍的に増加し、

全文:約4198文字

関連キーワード:

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー