黄銅めっき/ゴムの接着界面分析の最近のトピックス

2021年03月02日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 次世代に求められるゴムの分析・解析技術

黄銅めっき/ゴムの接着界面分析の最近のトピックス

TOYO TIRE㈱ 吉川宏美

1.はじめに

 タイヤの補強材として用いられる黄銅めっきスチールコードとゴムの接着界面分析手法について、過去に雑誌等で紹介してきたが、今回いくつか新たな機器や最新の機器を用いて分析したデータを紹介する。

2.黄銅めっきスチールコードとゴムの接着

 主にタイヤに用いられるスチールコードには、黄銅めっきが施されている。その黄銅めっきとゴムに配合された硫黄が反応し、強固に接着する。
 その接着界面の反応機構や劣化機構については、昔から多くの研究発表がなされているが、まだはっきりと解明できていない部分も多く、研究者によって、諸説ある。1)~5)
 私は経年劣化で接着界面がどう変化するのかについて着目して研究しているが、その中でもゴムに配合されている有機酸コバルトの作用について興味を持った。
 一般的には有機酸コバルトを配合すると、湿度と熱を加えた劣化試験において、効果を発揮すると言われている。しかし、実際にはゴム中には、有機酸コバルトは1~3phr程度しか配合されておらず、コバルト元素として、ゴム中に含まれる量は0.1wt%程度である。その微量のコバルトを分析する手法を最近のトピックスとして紹介する。
 全体の内容としては、最初に従来の一般的な接着界面分析手法について紹介し、後半でコバルト分析に着目した分析手法について述べる。

3.接着界面観察

 まず最初に選択する分析手法は、接着界面の状態を観察することだ。しかし、簡単には観察できない。なぜならゴムという柔らかい素材と、スチールコードという硬い素材が接着しているため、研磨等で平滑な断面作製を行うためには難易度が高い。しかも、その反応層は非常に薄く、数十~数百nmというサイズであり、元の状態を維持したまま断面作製を行うには、工夫が必要となる。
 このように薄い反応層を観察しようと思うと、かなり平滑な断面を作製する必要があり、その断面作製に最初のハードルがある。
 そこで第一に選択されるのが、イオンビーム加工による断面作製である。
 イオンビームの種類もいくつかあるが、アルゴンイオンビームを用いた断面作製装置もしくは、ガリウムイオンビームを用いたFIB(Focused Ion Beam)を用いることが多い。
 最近では、大面積を加工できるプラズマFIBや、レーザーを用いるものなどがあるが、それぞれ一長一短あるので、目的に応じて使い分けが必要である。
 イオンビーム加工する際、事前準備が必要で、その出来栄えによって、ビーム加工に費やす時間が大幅に変わってくる。私は今でも試行錯誤を繰り返し、いかに短時間でアウトプットを出すかに翻弄されている。
 断面作製ができれば観察を行うが、最近のFE-SEM(Field Emission – Scanning Electron Microscope)は非常に高性能になっており、誰でも簡単に高倍率画像が観察可能となっている。しかし、数十nm程度の層を見ようとすると、FE-SEMでは観察できないことが多い。そのような場合は、バルク断面

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