最高レベルの耐熱性と強度を有したバイオベースプラスチックの開発

2021年02月25日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 バイオプラスチックの現状と将来展望

最高レベルの耐熱性と強度を有したバイオベースプラスチックの開発

北陸先端科学技術大学院大学 高田健司・金子達雄

はじめに

 大気中の二酸化炭素濃度の増加やプラスチックごみ問題など、我々を取り巻く環境問題は年々深刻なものになってきている。こうした観点から天然由来の材料であるバイオベースプラスチックの開発とその応用は、近年世界中で最も注目されている分野の一つともいえる。セルロースなどの多糖誘導体やポリ乳酸は最もポピュラーかつ実用化に成功しているバイオベースプラスチックであり、様々な分野で利用されている。その一方で、これら汎用的なバイオベースプラスチックは、そのほとんどの結合様式がグリコシド結合やエステル結合であり熱に強い結合とは言い難い。もし、耐久性の高い、例えば高耐熱・高強度を示すバイオベースプラスチックを得ることができれば大気中の二酸化炭素を材料中に長期にわたって固定化できるため、大気中の二酸化炭素を削減できる「カーボンマイナス」が実現される。本稿では、こうした理念から開発された高い耐久性を有したバイオベースポリイミドやポリアミドの例を紹介する。

1.芳香族ジアミンの微生物生産とその応用

1.1 分子設計
 耐熱性や強度の高いポリマーを得るためには、ベンゼン環のような高い対称性、強い分子間相互作用を有した分子構造が要求され、一般的には芳香族ジアミンがこれらに該当する。この芳香族ジアミンを微生物から生産することができれば、目的の高耐久バイオベースプラスチックを得ることができる。しかし、ジアミンは高い毒性を示すものがほとんどであることから、微生物による高効率な生産は困難を極めた。一方で、モノアミンはいくつか微生物の生産経路の例があり、例えば放線菌の一種であるStreptomyces pristinaespiralisが作る抗生物質Pristinamycin Iの中には4-アミノフェニルアラニン(4APhe)に由来するユニットが含まれる。4APheが芳香族ジアミンとして利用できるだけでなく、これを遺伝子組み換え大腸菌処理により4-アミノ桂皮酸(4ACA)へと変換できれば、桂皮酸特有の光二量化が利用可能となり、対称性の高い芳香族ジアミンをバイオベースで得ることができる(図1)。

1.2 合成戦略
 以上の分子設計指針をもとに、筑波大学生命環境系の高谷直樹教授の研究グループとの連携により、バイオマス由来のグルコースを原料として、4APheを経由した4ACA生産経路を遺伝子組換え大腸菌により確立した。これにより得られた4APheは塩酸塩の中和によるヘテロなジアミン、4APheの二量化による環状ジペプチド(ジケトピペラジン、以下DKP)、4ACAの各種官能基修飾および結晶状態での[2+2]光二量化反応を行いそれぞれ芳香族ジアミンとすることができた(図2)。4ACAはジアミンではないが塩酸塩としてヘキサン中に分散させて高圧水銀灯を照射することで光二量化が可能であり、4,4’-ジアミノ-α-トルキシル酸塩酸塩が転化率99%以上で得られ、続く中和・活性炭処理により対称性の高い芳香族ジアミンである4,4’-ジアミノ-α-トルキシル酸ジメチルの結晶を高収率で得ることができた。一方で、4ACAのアミノ基をアセチル化し、光反応を行うことで芳香族ジカルボン酸である4,4’-ジアセトアミド-α-トルキシル酸を得ることも可能である。

2.バイオベースポリイミドの合成

2.1 溶解性を示す4APheベースポリイミド
 4APheにはジアミンに加えフリーなカルボン酸が含まれる。このカルボン酸が最終生成物であるポリイミドに溶解性を与え、結果、溶解性ポリイミドが得られると考えた。4APhe二塩酸塩を中和することでジアミンとし、テトラカルボン酸二無水物を反応、その後220℃で熱イミド化することで4APheベースポリイミドを得た(図3)。得られたポリマーはポリイミドであったため、300℃以上の高い耐熱性を有していた。また、このポリイミドの有機溶媒に対する溶解性を試験したところ、N,N-ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシドなどのアミド系溶媒に加え、テトラカルボン酸骨格の種類によってはテトラヒドロフラン(THF)やジクロロメタン(CH2Cl2)に溶解することが判明した(表1)。
 一方で、4APheから誘導されたDKPをベースとしたポリイミドは、環状ジペプチドに

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