住友化学、実証設備を新設 PMMAケミカルリサイクル

2021年08月25日

ゴムタイムス社

 住友化学は8月23日、アクリル樹脂(PMMA、ポリメチルメタクリレート)のケミカルリサイクル実証設備を愛媛工場に建設すると発表した。2022年秋に実証試験に着手し、23年にサンプル提供を開始する予定。同社は同取り組みと並行して、使用済みアクリル樹脂の回収から、再生、製品化までの資源循環システムを確立し、早期の事業化を目指す。

 アクリル樹脂は、合成樹脂の中でも極めて高い透明性を有するほか、耐候性や加工性にも優れるため、自動車のテールランプカバーや家電、水槽、屋外看板、液晶ディスプレイ、建築材料、飛沫防止板などに広く使用されている。20年の世界需要は130万tに上り、この先も堅調な伸びが予測されている。

 同社は環境意識の高まりを受け、自社での研究のほか、他企業やアカデミアとの協業により、さまざまなケミカルリサイクルの技術開発を推進している。アクリル樹脂については、日本製鋼所と共同で、日本製鋼所が有する二軸混練押出機を利用したプラスチックの連続分解技術と、同社が長年培ってきたMMA(メチルメタクリレート)モノマーおよびアクリル樹脂の知見をもとに開発を進めてきた。今回、アクリル樹脂を熱分解し、原料となるMMAモノマーとして再生する独自の基本技術を確立したことにより、実証設備の建設を決定した。この基本技術により得られたMMAモノマーを再重合してできるアクリル樹脂は、化石資源から製造したバージン材料と比較して、透明性や強度などの基本物性は同水準を維持した上で、製品ライフサイクル全体の温室効果ガス(GHG)排出量を60%以上削減できると見込まれる。

 今回の実証試験で原料とする使用済みアクリル樹脂は、水族館向け大型アクリルパネルで世界トップシェアを誇り、同社と約50年のパートナーである日プラから出る廃材を活用する予定となっている。また、事業化に向けて、廃棄される自動車や家電、飛沫防止板などからの回収を含め、安定的な原料調達システムの構築も併せて検討を始める。

 

アクリル樹脂シートと二軸混練押出機

アクリル樹脂シートと二軸混練押出機

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