特集 樹脂添加剤・フィラー活用法 熱可塑性高分子材料とポリマーブレンドの力学特性

2021年03月09日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

特集1 多様な要求に対応する樹脂添加剤・フィラー活用法

熱可塑性高分子材料とポリマーブレンドの力学特性

山形大学 高山哲生

1.はじめに

 熱可塑性高分子材料はその熱可塑性を利用した成形加工により多種多様な製品が生み出されている。熱可塑性とは材料に熱を加えることで可塑性を生み出す性質のことを指す。したがって熱可塑性高分子材料の成形加工には必ず熱の移動が存在する。材料に熱が加わると多くの材料が膨張し、熱が取り除かれると収縮する。つまり熱可塑性高分子材料で作製された成形品の内部には必ず成形加工時に受けた熱の移動により生じるひずみが残存する。このひずみは等方的に生じるため、ひずみ計などで観察することはできない。この考えを導入すると、熱可塑性高分子材料の降伏開始能力を理論的に説明することが可能となる。本稿では熱可塑性高分子材料とこれを2種類以上混合したポリマーブレンドを対象として、その成形加工温度と力学特性の関係について述べる。熱可塑性高分子材料の降伏開始応力を求める理論についてまず説明を行い、この理論から三点曲げ試験によって全ての弾性係数を求めることができることを示す。その後理論に基づいて求めた弾性係数、実験にて得られた降伏開始応力や破壊じん性に関してその成形加工温度依存性を理論と合わせて解説する。

2.熱可塑性高分子材料の力学特性

2.1 熱可塑性高分子材料の降伏開始条件1)
 材料の塑性変形はせん断変形によって生じる。したがって、塑性変形の開始である降伏開始に必要となる抵抗力はせん断変形開始応力と捉えることができ、この項ではこの抵抗力をせん断面で生じる摩擦力と考える。凝着説によれば、摩擦力は下記の式(1)で表される2)。
 ここで、Arは真の接触面積、τyは降伏せん断応力である。この理論ではArを1とおく。
 熱可塑性高分子材料の成形品の内部にはひずみが内在しており、このひずみによる残留応力からせん断面に対して垂直な応力成分を取り出して、これをσtとして下記の式(2)として表す。
 ここで、αは平均線膨張係数、ΔTは成形加工温度と試験温度の差分、εは縦弾性係数、θはせん断角である。アモントン・クーロンの法則によれば、摩擦力は下記の式(3)でも表すことができる2)。

全文:約8392文字

関連キーワード:

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー