現場に役立つゴムの試験機入門講座 第5回 引張試験について

2021年02月25日

ゴムタイムス社

*この記事はゴム・プラスチックの技術専門季刊誌「ポリマーTECH」に掲載されました。
*記事で使用している図・表はPDFで確認できます。

シリーズ連載② 現場に役立つゴムの試験機入門講座
第5回 引張試験について

蓮見―RCT代表 蓮見正武

 ゴムの引張試験は硬さ試験同様にゴムの基本的な特性を知る上で不可欠です。「硬さ、引張強さ、伸び」はワンセットの試験として必ず行われています。
 天然ゴムが中心の時代には「引張り強さが強いゴムは良いゴム」とされていました。
 実際には、強度不足でゴムが切れてしまうことはあまりなく、切断伸びよりもはるかに小さな変形で亀裂が入ったり、へたって使用不能になることが多いので引張強さ、伸びはそれほど重要ではないのですが、製品規格に硬さと並んで必ず記載されているのは、「強くてよく伸びる」というゴムのゴムらしさを端的に表しているからでしょう。

引張試験の規格

 「引張り試験」は引張り強さ(破断強さ)、伸び(破断伸び)、一定変形における応力(引張モジュラス)を総称しています。単に「物性」と言うときはこの引張り試験の数値を指しています。高温時の物性、老化後の物性、浸漬試験後の物性などと区別するため、老化していないサンプルの室温における引張り試験を「常態物性」と呼ぶこともあります。
 引張試験方法は各国ともISOに準拠した規定が採用されているので、若干の違いはあっても試験法はほぼ統一されています。
◦ISO 37:2017
Rubber,vulcanized or thermoplastic-Determination of tensile stress-strain properties

◦JIS K6251:2017
 加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張り特性の求め方
Rubber,vulcanized or thermoplastic-Determination of tensile stress-strain properties
 ISO 37に旧JIS K6301に規定されていたJIS 1号ダンベル、JIS 2号ダンベルを付け加えた内容です。日本では広く普及しているJIS 3号ダンベルはISOにもタイプ1Aとして採用されています。

◦ASTM D412-16(2016)
Standard Test Methods for Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers-Tension
 引張試験のほかにテンションセット試験も含んでいます。ダンベルはA~Fの6形状でC形ダンベルはISOタイプ1として採用されていますが、C形以外のダンベルはISOには採用されていません。
 低温高温で測定するための恒温槽の規定があり、熱可塑性プラスチック、熱可塑性エラストマーの試験は厚み3mmで行う、短冊状の試験片も認めているなど、ISOと異なるところが多くあります。

◦中国規格 GB/T 528-2009
 硫化橡胶或热塑性橡胶拉伸应力应变性能的测定
Rubber,vulcanized or thermoplastic-Determination of tensile stress-strain properties
 ISO 37の中国語版です。

引張試験方法の変遷

 日本での引張試験の規格は昭和25年(1950年)のJIS K6301:1950に始まります。試験片の厚み2~3mmとされていたので2.5mmの加硫シートからダンベルを打抜くのが一般的でした。振子型引張試験機を用いて200mm/分で引張り、試験片5個のうち最小1個を除く4個の算術平均とされていました。
 JIS K6301:1958の改正で引張速度は500mm/分となり、引張強さと伸びの計算方法が算術平均から荷重平均のモード法となりました。
 1993年の新JIS移行により引張試験はJIS K6251となり、モード法からメディアン値となりましたが、基本的な測定方法の変更はなく現在に至っています。2004年の改正で「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム」となったために降伏点に関する項目が追加されました。

引張試験機の変遷

 初期の引張試験は振り子型のショッパー式でしたが、現在はロードセルを用いたデジタル式が殆どです。一柱型と門型がありゴムの引張試験主体の場合は一柱型が多く、接着試験、曲げ試験や繊維材料の試験、金属材料の試験など多目的な試験には門型が使われています(図1)。
 1990年代から伸びの自動測定が実用化されました。伸びの読み取りは非接触式と接触式に大別されます(図2)。非接触式はダンベルにつけた標線をCCDカメラで捕え、標線の移動とともにカメラを移動させて標線間距離を追跡します。接触式は標線位置をクリップで銜えて、移動するクリップ間の長さから伸びを測定します。
 どちらが良いかは一長一短があると思われます。
 筆者の経験では非接触式は白色ゴムやカラーゴムの場合、地色と標線のコントラストが弱いと標線の判別に問題があります。これらのゴムは概して伸びが大きいので試験片が伸びると標線が薄くなってますます見分けが難しくなります。黒色ゴムに白色標線の試験が多い場合には適していると思います。
 一方、接触式の場合は白色ゴム、カラーゴムでも問題はありませんが試験片が切れるときの衝撃でクリップが外れたり損傷することがありました。
 また熱可塑性ゴムのように非常に伸びが大きくて細くなる試験片の場合クリップがズレる心配があるように感じました。
 最近はカセットにいれた数十本のダンベルを順次測定する自動装置や、加硫シートをセットすればダンベル打抜き、硬さ、厚み、引張試験、比重測定まで全て無人で行う自動装置も開発されて省力化が進んでいます(図3)。自動式は便利ですが、一日の試験本数が多くない小規模な試験室では大掛かりな自動装置よりもシンプルなショッパー式、一柱型で物差しを当てて人間が読み取るやり方でも遜色ない結果が得られています(図4)。

ダンベル形の形状と寸法について

 引張試験は通常ダンベル形試験片で行われます。
 ゴムは他の物質に比べて破断伸びが大きいので短冊状サンプルではクランプした箇所に応力集中して切れてしまい、正しいゴムの強さが測れません。
 そこで、クランプする部分の幅を広くしてクランプ部分は伸びないようにすることが考えられました。最初の形状は試験片の両端を幅広にしたI形のような形状だったのでしょう。その名残はJIS K6273 「引張り永久ひずみ」(図5)などに見られます。
 その後改良が加えられて現在の滑らかな曲線を持つダンベル形になったと思われます。
 ダンベル形状はASTMをはじめ各国規格に採用されていますが、微妙に違います。
 ISO、ASTM、JISのダンベルの寸法を表1 (A)~(D)に示します。
 JIS K6251の7号形はISOのType4に、8号形はISOのType3に対応と入れ違っているので注意が必要です。
 JIS K6251ではダンベル1号形~8号形のほかに、ダンベル形が取れない場合のためにリング状A号形、リング状B号形を規定していますが、ダンベルが取れる場合はダンベルで行なうのが一般的で、日本ではJIS3号形(ISOタイプ1A)が広く使われており特に断りがなければ3号形が常識です。
 ダンベル状1号形試験片は伸びの小さい試料に、ダンベル状2号形試験片は引張強さの小さい試料に用いるとされていますが、1号形はオゾン試験の試験片としても使われます。

ダンベルの厚さについて

 引張試験に先立ってダンベルの厚さを測らなければなりません。通常はスタンド付きのダイヤルゲージを使います。手持ち式のシックネスゲージを使っている場面を見かけますが、垂直にならず、
押しつけ力も一定しないので好ましくありません(図6)。
 JIS K6251:2017ではダンベル形試験片に用いる厚さ計はJIS K6250 「ゴム-物理試験方法通則」の10.1a)(寸法測定のA法)によるとされていて、具体的には直径10mm以下の平滑な測定子を持ちゲージは寸法の1%または0.01mmのいずれか小さい方の読取り精度で加圧面の圧力は硬さ35 IRHD未満の加硫ゴム及び熱可塑性ゴムでは10±2kPa、35IRHD以上では22±5kPaと規定されています。
 一般的な直径5mmの測定子、8mmの測定子、10mmの測定子の場合、上記の加圧力を与える質量は表2となります。
 この厚さ計によりダンベルの平行部分のそれぞれの標線付近及び中央の厚さを測定し三つの測定値の中央値を断面積の計算に用いる。平行部分の三つの厚さの測定値が厚さの中央値から2%以上異なってはならない、と定められています。
 ダンベルの厚さは通常2.0±0.2mmなのでその1%は0.02mmですから、厚さ計としては0.01mmの読取り精度が必要です。そして3個所の測定値は中央値(メディアン値)に対して2%(0.04mm)以内でなければなりません。
 旧試験法のJIS K6301:1995では厚さの測定は直径5mmの測定子と1/100mmの目盛を持つ厚さ計で80gの荷重で平行部分の数か所を測定し最小値を取るとされていました。そして厚さの不同(平行部の厚さの最大値と最小値の差)は0.1mm以内と規定されていました。
 旧JIS準拠の厚さ計を使用していると、荷重が大き過ぎると言うことになります。現実問題として大きな影響があるとは思いませんが、非常に低硬度のゴムの場合厚さが薄くなる可能性があります。

3号ダンベルの謎

 JIS K6251に変わるとき3号ダンベルは広く普及しているため、1号~4号ダンベルはそのまま残し、ISO 37のタイプ1~タイプ4を5号形~8号形として加え、合計8種類のダンベルが採用されました。
 その後JIS3号ダンベルはISOタイプ1、タイプ2よりも標線外破断が少なく優れていることが分かり、ISOにタイプ1Aとして採用されたことはご存じの通りで、この経過はゴム協会誌2009年1月号に書かれています。3)
 では、このように優れた3号ダンベルはいつ、誰が開発したのでしょうか。
 JIS K6301は1950年(昭和25年)に制定され、ダンベル状試験片1号形~3号形は初版から記載されていますので、この時代には既に存在していたことが分かります。
 JISの前身としてJES規格(Japanese Engineering Standard)がありましたが、「ゴムの引張り試験方法」或いは「ゴムの引張り試験片」に関するJESはありませんでした。しかし、各種ゴム製品のJES規格には物性規格と試験条件が定められているので、どのような試験片が使われるかを調べました(表3)。
(1)‌コンベヤゴムベルトのJES旧規格411号(13.12.9)では図7の試験片が規定されていました。JES臨時規格492号(S18.10.12)およびJES輸出規格94号(S23.10.1)では図8の試験片が図示されていますが、この図はJIS K6301の1号形と同じなので昭和23年にはJIS1号形が一般的だったと思われます。
(2)‌ゴムホースの輸出規格99号(S23.10.1)には図9の試験片が規定されています。 
全長、全巾、平行部の長さと巾がJIS3号ダンベルと同じなので、この形状が3号形の原形ではないかと思われます。
(3)その他の製品では
JES輸出92「ソリッドタイヤ」(S23.10.1)
JES輸出100「もみすり用ロール」(S23.10.1)
JES輸出112「軟質ゴム板」(S23.10.1)
 はいずれも「試験片は1号形を用いる」と記述されていますが、図示されていないので確認できません。しかし同じ日に制定されたJES輸出94「コンベヤゴムベルト」がJIS1号形と同じなのでおそらくJIS1号形と同じと思われます。
(4)‌昭和25年以前にはどのような試験片が使われていたか、日本ゴム協会誌の第一巻(昭和3年)に遡って調べましたが、「ダンベル状試験片」「リング状試験片」という言葉が散見されるのみで図示されていないために明確にできませんでした。またダンベルの形状について研究したという報文も見つかりませんでした。
 結局、JIS3号形ダンベルのルーツを発見することは出来ませんでしたが、昭和18年にはJIS1号形が既に使われていたことが分かりました。昭和23年には、1号形が通常使われており3号形は使われておらず、昭和25年のJIS K6301:1950制定において3号形が出現し、以後主役として国内に普及したと考えられます。
 ASTM準拠形状でなく日本独自形状が考案された事情や1号形から3号形に移っていった事情は分かりませんでしたが、現代において3号形の形状がISOタイプ1(ASTM C型)より優れていることは、先人の知恵の賜物と思われます。

幻のJIS 4号形

 JIS3号形の形状はISOタイプ1、タイプ2ダンベルに比べて標線外破断が少なく優れています。しかし、過去にはもっと優れたダンベルがありました。1966年に網島氏らは6種類の配合を用いて9種類のダンベル形状を比較し、図10のダンベルを「形状A」として推奨しています。4)
 また鈴木氏は11種類のダンベル形状を評価し、「形状A」を更に改良した「形状C」が最も標線外破断が少ないことを報告しました(図11)。5)
 形状CはJIS K6301:1969に4号形ダンベルとして採用されましたが「4号形は主として厚み1mm以下の純ゴムシートの試験に用いる」とされたので4号形は普及せずJIS K6251:2010改正時に廃止されて現在空席となっています。

モード法とメディアン法

 多数の本数のダンベルの引張試験を行うと、平均値の左右が対称の正規分布にならず、引張強さが低いほうに裾を引く二重指数分布となることが知られています(図12)。3)
 ゴムの表面或いは内部にはさまざまな欠陥があり、破壊の起点になると考えられます。欠陥には表面の凹凸、傷、ゴム中の異物、ゴミ、気泡、カーボンブラックや配合剤の凝集塊や分散不良などマクロ的な欠陥のほか、イオウや加硫促進剤の不均一分散や再結晶による架橋度のバラツキ、ポリマー分子鎖の配向、ポリマー分子鎖の酸化による劣化部分の発生などミクロ的な要因も考えられます。
 伸長により充填剤とゴムの間に空隙(ボイド)が発生し破壊の起点になるとも言われています。
 加瀬氏は欠陥の存在確率を理論的に考察し1952年~1960年の日本ゴム協会誌に23件の論文を発表し、1957年には4本のダンベルの引張試験の値を大きい順に並べたとき(S1≧S2≧S3≧S4)
引張強さ S=0.5×S1+0.3×S2+0.1×(S3+S4)
 という計算式(モード法)を提案しました。この式は翌年JIS K6301:1958に採用されました。卓見であったと思います。6)
 1993年にISOと整合を図るためJIS K6251:1993が発行され、ISOと同じメディアン法に変更されモード法は過去のものとなりました。
 メディアン法においては引張試験は3本のダンベルについて行い、2番目に大きい値(メディアン値)を引張強さ、伸び、引張応力(引張モジュラス)とします。1番目の値がどんなに大きくても、或いは3番目の値がどんなに小さくても試験結果として反映されません。
 メディアン法による引張強さはモード法に比べて2~4%低下し、バラツキも大きくなります(図13)。
 岡本氏らは由来の異なる加硫促進剤TMTDを配合した加硫ゴムの引張試験を行い、表4および図14に示すようにメディアン法、モード法では非常に低い値のデーターが無視されるので2種のTMTDにあまり差がないという結論に繋がる可能性を指摘しています。8)
 試験結果を考察するときはメディアン値だけでなく、個々のデーターの分布、バラツキを吟味し、捨てられるデーターについても考慮する必要があるということです。

引張試験の用語について

 引張り試験の用語や記号は時代により変化していることは案外見過ごされています。
 JIS K6301が普及する前は引張強さ、伸び、引張応力はT.S.(Tensile Strength)、El(Elongation)Mod(Modulus)と略記されていました。
 JIS K6301ではTB(Tensile at Break)、EB(Elongation at Break)、Mn(n%Modulus)となり、この表記が普及しました。
 JIS K6251になってからは
 TB、 EB、 Mn (K6251:1993)
 TSb、 Eb、 Mn (K6251:2004)
 TSb、 Eb、 Se (K6251:2010)
 Tb 、 Eb、 Se (K6251:2017)
 となり、引張応力はStrainを意味するSを使うこととなっています。また破断(break)を意味するbは小文字です。引張強さ、引張応力の単位はkg/cm2、kgf/cm2、MPaと変化しています。
 一定変形時の引張応力は長らく「モジュラス」と呼ばれ100%モジュラス、300%モジュラスが使われていましたが、JISでは「引張応力」と呼んでいます。
 JIS K6301及びJIS K6251:1993では単に「引張応力」ですがJIS K6251:2004では「所定伸び引張応力」、JIS K6251:2017は「所定伸びにおける引張応力」と表記されています。
 ISO 37では「stress at a given elongation」ASTM D412では「tensile stress at(xxx)%elongation」となっており、Modulusという言葉ではありません。
 JIS K6200:2008「ゴム用語」では「引張モジュラス」と言う言葉が残っています。

おわりに

 JIS3号ダンベルはJIS K6301:1950で突然登場し、以後引張試験の主役となりましたが、その生い立ちは謎に包まれています。ご存じの方はぜひ教えて頂きたいと思います。

参考資料

(1)上島製作所提供資料
(2)東洋精機製作所カタログより引用
(3)‌和田法明「ゴムの引張試験ダンベルについて」日本ゴム協会誌 第82巻第1号P42(2009)
(4)‌網島貞男、吉岡丈二、南長二「ダンベル状試験片の形状に関する研究」日本ゴム協会誌 第39巻第1号P69 (1966)
(5)‌鈴木常三郎「ダンベル状試験片の改良について」日本ゴム協会誌 第40巻第11号P937(1967)
(6)‌加瀬滋男 日本ゴム協会誌「ゴム引っ張り強さ測定値のまとめ方について(第8報)」 第30巻第11号P852(1957)
(7)‌日本ゴム協会編集「ゴム物理試験方法 新JISガイド」大成社(1996)
(8)‌岡本智美、寺田直樹、立畠達夫 「加硫系配合剤の練りと分散」日本ゴム協会誌 第92巻第12号P465(2019)

【著者紹介】
蓮見正武
蓮見-RCT代表
1944年生神奈川県在住。1967年慶応大学工学部卒横浜ゴム入社。1997年退社し、㈱ケースリー、㈱ニシヤマ、相洋ゴム㈱を経て2011年蓮見-RCT開設。
専門はゴム配合と精練加工。[/hidepost]

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