ランクセスが調査 アジアでの「エコタイヤ」需要予測

2011年12月06日

ゴムタイムス社

 低燃費車増、法規制で高い成長見込む

 ドイツの特殊化学品メーカーのランクセスは、ミュンヘン工科大学のホルスト・ヴィルデマン教授に委託して、実施した調査レポート「ラベリング制度とエコタイヤ:日本、韓国、中国における国内法規制、道路基盤と市場環境」の結果を発表した。

 この調査は、近年、低燃費車への需要が高まり、燃費性能を向上させたタイヤ開発に注目が集まる中、日本、韓国、中国におけるエコタイヤの導入、各国内の法規制、および道路基盤と市場環境の状況について、取りまとめたもの。

 EUでは、「ラベリング制度」が2012年11月から法規制として適用されるが、アジア各国でも、この基準を規範として政策の策定が進められている。そのため、大手タイヤメーカーでは、日本、韓国、中国などアジアの主要市場に大きな注目を寄せている。

 調査結果概要は次の通り。

 ▽日本  日本では、輸送部門の燃費向上のためにさまざまな取り組みが行われており、世界有数の多大な効果をあげていることは、データからも明らかであり、国内エネルギー消費量全体に占める道路部門の割合は、2003年の15・05%から2008年には13・93%に低下している。この数字は、世界でも突出した厳しい自動車の排ガス規制によって達成されたもの。さらに2005年に高速道路の民営化法が成立したことによって、世界水準の高速道路機構が組織されている。
 輸送システムの低燃費化を進める上で、非常に重要なステップとなるのが、細部に渡って規定された包括的な低燃費タイヤの「ラベリング制度」の導入。
 日本自動車タイヤ協会(JATMA)により策定され、2010年に業界自主基準として導入された日本の「ラベリング制度」は、技術的にEU基準と同じ水準にある。 この制度によって、これまでになかったタイヤの転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を組み合わせたグレーディングシステムが確立され、後に続くアジア諸国にとっては絶好の基準が新たに提示された。
 日本の「ラベリング制度」は、2010年1月から段階的に適用され、2011年12月末までに適用完了することを目標にしている。日本経済は、不安定な要素があるとはいえ、世界の5大市場の1つとしての地位を維持しており、エコタイヤ市場への投資を図る企業にとっては非常に大きな可能性を持つ市場と言える。本調査では、日本のエコタイヤの市場シェアは、2020年までに70~80%まで拡大すると予測している。

 ▽韓国  アジアの経済先進国の1つである韓国は、一貫して経済成長を続け、公共・民間の両部門で自動車の普及が着実に進んでいる。日本に続き、韓国でも2011年から低燃費タイヤの「ラベリング制度」が自主的に導入されている。ラベルには転がり抵抗性能とウェットグリップ性能が表示され、EUや日本と同様のグレーディング(等級付け)が行われる。 「ラベリング制度」の導入は、韓国が輸送部門の燃費効率を向上させ、他の先進諸国に肩を並べるための重要なステップである。低燃費タイヤの規定は、2012年11月から義務化されるため、韓国のエコタイヤ市場は投資家にとって非常に有望な市場であると言える。 韓国のエコタイヤの市場シェアは、2020年までに75~90%まで拡大すると予測している。

 ▽中国  中国経済は世界で最も急速に拡大しており、その影響は基盤整備にも直接的にあらわれている。2000年以降、道路基盤は年平均20%で拡張し続けており、2010年時点で国内の道路の総延長は398kmに及んでいる。開発を進める過程では、同時に、燃料消費量に加え炭酸ガス排出量や大気汚染がもたらされている。市民の環境に対する意識はまだ低いものの、中国政府はグリーン経済の開発を強化しようとしている。将来的には、燃費効率の高いタイヤの導入によって自動車の低燃費化を進め、輸送部門全体での炭素ガスの排出低減が見込まれる。中国のタイヤ業界は高性能で高い走行安全性能を備えると同時に、環境性能が高く、燃費効率の高い製品に焦点をあてていくことが予測される。中国のエコタイヤの市場シェアは、2020年までに50%まで拡大すると予測している。

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