理研 天然ゴムのドラフトゲノムを解読 育種の効率向上など可能に

2016年06月27日

ゴムタイムス社

 理化学研究所(理研)は6月24日、環境資源科学研究センター合成ゲノミクス研究グループの松井南グループディレクターらの国際共同研究チームが、天然ゴム(パラゴムノキ)のゲノム解読を行い、93・7%以上の遺伝子情報を包括する質の高いドラフトゲノムを得ることに成功したと発表した。

 ゲノム情報を解読することができれば、育種をより科学的に効率よく進めることができる。また、ラテックス(樹皮を傷つけると分泌する乳白色の液体)が作られるメカニズムが分かれば、特性の向上した天然ゴムを作ることが可能になる。

 解読を行ったのは、松井ディレクターのほか、マレーシア科学大学化学生物研究所のニョクシン・ラウ博士、アレクサンダー・チョンシュウチェン教授。ドラフトゲノムとは、全ゲノムの概要のこと。

 今回、国際共同研究チームがゲノム解読を行ったのは、東南アジアで広く用いられているRRIM600という系統のパラゴムノキで、1・55Gb(ギガ塩基対、Gは10億)の質の高いドラフトゲノムを得ることができた。

 得られたドラフトゲノムを解析したところ、天然ゴムのラテックスのラバーパーティクル(球状の小分子)に含まれるタンパク質の遺伝子が、ゲノム上で同じ転写方向に並んだ遺伝子クラスタを形成していることを発見した。また、病害抵抗性の遺伝子も、ゲノム上に遺伝子クラスタを形成していた。

 さらに、CAGE法により遺伝子の転写開始部位を正確に決めることで、葉や茎に比べてラテックスは、天然ゴム関係の遺伝子が100倍以上発現していること、各組織で転写開始部位が変化する可能性も見出した。同じトウダイグサ科の植物とゲノム比較したところ、パラゴムノキは、キャッサバ、トウゴマ、ヤトロファなどの重要な植物と高い相同性を示すことも分かった。

 現在、世界の約90%以上の天然ゴムは東南アジアで生産されており、パラゴムノキの優良木との掛け合わせといった従来の品種改良によって、生産性を上げている。しかし、優良木との掛け合わせによる品種改良は経験が必要で、十分なラテックスが採取できるまでに10年以上の年月がかかっている。

 ゲノム情報は、天然ゴムの生産性や特性の改良に非常に重要であるとともに、天然ゴム育種の科学的な基盤になる。

 同研究は、英国の科学雑誌「Scientific Reports」(6月24日付け)に掲載されている。

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