25年ゴム業界10大ニュース 関税・物価高対策に注力した1年に

2025年12月09日

ゴムタイムス社

 第二次トランプ政権による関税施策が世界経済を大きく揺るがせた25年。日本経済も米国関税施策の影響が一部で見られた。主要原材料価格を中心に物流費、労務費などのコスト上昇が続く。人手不足は慢性化し、建築業や物流業では人手不足を背景とした倒産も相次いだ。
 ゴム産業をみると、主要需要先の自動車業界は自動車メーカーによって生産動向が異なり、受注車種の生産台数によりゴム企業の業績も生じている。一方、半導体業界は生成AI関連で使われる先端材料・部品の需要が好調に推移するも、スマホやサーバーなどの汎用品は回復に足踏みの状況にある。海外では、アセアンと中国は日系自動車メーカーの販売シェアが低下。現地進出するゴム企業も厳しい事業環境を強いられている。一方、北米は関税影響が懸念されたものの、底堅い成長をみせる。その他ではインド事業拡大に乗り出すゴム企業が相次いでいる。
 ①ゴム企業の業績はまだら模様。
 上場ゴム企業の26年3月期第2四半期業績をみると、21社合計の売上高は2兆210億4300万円で前年同期比1・4%減。21社中増収企業は9社で増収企業は全体の約4割となった。インフレや円安による資源価格、物価上昇、さらに米国の関税政策などにより不透明な状況が続くなか、自動車業界では、国内の自動車メーカー各社の生産台数は各メーカーでまだら模様の状況にある。このため、受注車種の生産台数の増減でゴム企業の売上も影響がでている。
 ②国内タイヤ各社、高付加価値化加速
 国内タイヤ各社が高付加価値品へのシフトを加速している。ブリヂストンは新たなプレミアムと位置付ける商品設計基盤技術「ENLITEN」を乗用車用スタッドレスタイヤで初搭載した「ブリザックWZ-1」を25年9月より発売を開始した。住友ゴム工業は、同社の独自技術「アクティブトレッド技術」を搭載したシンクロウェザーの販売が好調。シンクロウェザーは約100サイズ(軽自動車サイズ含む)に販売拡大中で、26年以降も増販・収益向上を目指す。横浜ゴムは、ADVANヤGEOLANDAR、WINTER、18インチ以上の高付加価値商品の拡販に力を注いでおり、25年のプレミアムカーへの新車装着本数は22年比で1・3倍に増える見通し。TOYOTIREは10月2日、新技術体系「THiiiNK(シンク)」を発表した。今後はシンク技術を適用商品を拡大していく。
 ③住友ゴム、ダンロップの経営権取得
 住友ゴム工業は1月8日、米国のGoodyear(グッドイヤー)社から欧州・北米・オセアニア地域における四輪タイヤのDUNLOP(ダンロップ)商標権等について譲渡契約を締結したと発表した。今回の商標権取得に伴い一部の地域や商材を除き同社がグローバルにダンロップブランドでの商品展開が可能になる。今後はダンロップブランドを同社の基幹ブランドに位置付け、タイヤ事業とスポーツ事業の共同でブランド強化活動を推進する。
 ④合成ゴムメーカーが国内で生産能力を増強
 東ソーは6月12日、南陽事業所でクロロプレンゴムの生産能力増強を決定した。生産能力は年間2・2万t増強し、合計の生産能力は5・9万t。投資額は約750億円で、工事着工は27年春、商業運転開始は2030年春を予定。ENEOSマテリアルは11月4日、SSBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)の需要拡大に対応すべく、四日市工場の生産能力を1万t増強を決定した。同投資は27年12月の完工を予定している。
 ⑤インドに進出拠点拡充する動き広がる
 ニッタは2月20日、連結子会社のNITTA CORPORATIONINDIAの工場を移転・拡張すると発表。新工場の竣工は26年1月末を予定する。新工場ではこれまでのベルト製品、ホース・チューブ製品の加工に加え、エアフィルタなど空調製品の製造も行う予定。ゴム原料を扱う商社では、加藤産商が25年5月、インドのグジャラート州のアーメダバードに商社事業を行う現地法人を開設。東京材料は、25年7月に南部のチェンナイに支店を開設した。そのほか、加貫ローラ製作所は24年3月にインドで現地企業との合弁会社「Katsura Roller India 」を設立。25年度から印刷用ゴムローラの生産を本格化させている。
 ⑥ブリヂストン、新CEOに森田副社長が昇格
ブリヂストンは、26年1月1日付で代表執行役GlobalCEOに森田泰博代表執行役副社長が就任する人事を発表した。森田副社長は「。『最高の品質で社会に貢献』という使命のもと、世界中の仲間とともに必ずNo1に返り咲く、明確な意思を持ってブリヂストンをより大きく、より美しく磨き上げたいと考えている」と述べた。
 ⑦NOKとイーグル工業が経営統合
 NOKとイーグル工業は11月10日、同日に開催した各社取締役会で、共同持株会社設立(株式移転)による経営統合を実施する発表した。両社は経営統合により26年10月1日(予定)をもって、両社の完全親会社「NOK Group㈱を新設する。NOKの鶴正雄社長は「営業、生産、技術面、間接部門などあらゆる機能での効率的な事業運営に加え、統合により拡大した経営資源の最適な配分を通じた企業価値向上を目指す」と語った。
 ⑧TOYOTIREが創立80周年式典を開催
 TOYOTIREは11月4日、大阪市のリーガロイヤルホテル大阪で創立80周年記念謝恩レセプションを開催した。清水隆史社長は「創立80周年を迎えることができたのもひとえに弊社製品をご愛顧頂いてきたお客様、様々な立場のご関係各位より頂戴した多大なるご支援の賜物に他ならない。25年度を最終着地年とする「中計21」では次世代技術の研鑽や世界R&D体制の確立、DXやサステナブル経営の推進など、全方位に揺るぎない意志を込めて取り組んでおり、計画に掲げた目標をおよそすべて達成する見込み」とこれまでの取り組みと成果を振り返った。
 ⑨各商業組合は組合員数の減少などが課題に
 工業用ゴム製品卸商業組合全国連合会は9月18日、名鉄グランドホテル(名古屋市)で第43回全国ゴム商組連合会及び全国連合会商工懇談会を開催した。全国6組合に実施したアンケートの集計結果によると、現在の組合における問題点の設問では「会場費用、各種コストの上昇」(東部・中部)が新たに問題点として挙がった。また、引き続き「組合員数の減少」は各組合共通の問題点として浮き彫りになった。
 ⑩ゴム連合20周年記念大会を開催
 ゴム連合は9月5日、愛知県豊橋市のホテルアソシア豊橋で結成20周年記念式典を開催した。萩原一人中央執行委員長は「ゴム産業に集う労働者が一体となり未来に一歩ずつでも前進できることを切望し、「ゴム連合に集う全ての人々が、誇りを持ち、生きがい・働きがいを感じ、安心して生活をおくれることを目指す」との理念に基づき、魅力あるゴム産業づくりに向けた運動を展開したい」などと挨拶を結んだ。[/hidepost]

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