帝人は11月12日、使用済みのポリカーボネート(PC)樹脂を再生し、新品のPC樹脂に相当する品質を備えた高品質なリサイクルPC樹脂を開発したことを発表した。この再生には、リサイクル技術のひとつであるソルベントベースドリサイクルを用いている。
循環型社会の実現に向けてリサイクル材の活用が加速する中、欧州では新車の製造時に廃車由来のプラスチックの使用を義務づけるELV規則案の導入が検討されるなど、リサイクル材の普及と関連技術の開発が急務となっている。
PC樹脂は透明性や耐衝撃性に優れ、自動車部品や電気・電子部品など、幅広い分野で使用されている。リサイクルには、使用済みのPC樹脂を粉砕・洗浄して再利用するマテリアルリサイクルに加えて、化学的に分解してモノマーなどの原料まで戻すケミカルリサイクルの技術が確立されている。
しかしながら、市場から回収されたPC樹脂には、さまざまな異物が混入している可能性があり、これらの異物がマテリアルリサイクル品の物性や外観などに影響を及ぼす懸念がある。また、ケミカルリサイクルはコストの抑制や製造時のCO2排出量削減が課題となっている。
こうした中、同社は、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルが抱える課題の解決を目指し、ソルベントリサイクルを用いたPC樹脂の開発に向けて新たなリサイクルプロセスの構築を進めてきた。
同社は、市場から回収されたPC樹脂のうち、従来のマテリアルリサイクルでは高い透明性が求められる用途において再利用が困難だったものを、溶媒で溶解・精製し、再利用可能なポリマーへ戻すことで、新品のPC樹脂に相当する品質を持つリサイクルPC樹脂へ再生する。
ソルベントリサイクルで生産したリサイクルPC樹脂は、高い透明性を有するため、廃棄されたヘッドランプから新しいヘッドランプへリサイクルするなど、高い透明性が求められる製品への水平リサイクルを実現し、リサイクル材の普及を促進する。また、化学的分解によって原料まで戻す工程を伴わないため、ケミカルリサイクルで生産したPC樹脂と比較して、製造コストを低く抑えることができるほか、製造工程におけるCO2排出量の削減にも寄与する。
当社は、2026年度中にソルベントリサイクルを活用したリサイクルPC樹脂の商業化を目指す。また、ソルベントリサイクルの研究・開発を継続し、同リサイクル法を通じて生産するPC樹脂のさらなる品質向上を図っていく。

