クラレは11月11日、耐熱性ポリアミド樹脂〈ジェネスタ〉を用いたクーラント・コントロール・バルブが、国際的なプラスチック技術者協会主催の「SPE Automotive Award 2025」(New Mobility部門)を受賞したと発表した。同CCVは、中国の熱交換器メーカー大手のYinlun社と共同開発したものとなる。
「SPE Automotive Award」は、自動車産業における革新的なプラスチック技術を表彰するものとなる。今回受賞したCCVは、金属に代わる軽量かつコンパクトな設計で、新エネルギー車の燃費向上に貢献することが評価され、「New Mobility部門」で第3位を受賞した。
同CCVは、高いレーザー透過率特性と耐加水分解性を有する〈ジェネスタ〉の強化繊維配合グレード2種を組み合わせることで、自動車用途で重要な動的負荷に耐える剛性と耐疲労特性を実現した。
また、〈ジェネスタ〉は無理抜き成形やレーザー溶着接合など複数の材料加工工程に対応可能なため、CCVの生産効率を向上できる。
自動車の熱管理システムは、駆動モーターやバッテリー、インバータなどの温度管理が必要な部品に冷却水を最適に分配する複数の電動バルブを備えており、車両全体のエネルギー効率を高める役割を担っている。特に新エネルギー車では、熱管理システムの複雑化が進んでおり、性能向上には技術革新が不可欠となる。同社の〈ジェネスタ〉における材料設計技術とYinlun社の製品設計技術を融合させた新たなCCVは、電動バルブの統合による軽量化と冷却制御の高精度化を実現し、新エネルギー車の航続距離の延長や内燃機関車の大幅なCO2排出量削減など、環境性能向上への寄与が期待される。
ジェネスタは、世界に先駆けて原料モノマーから自社開発した耐熱性ポリアミド樹脂で、1999年に事業化した同社の独自素材となる。耐熱性、耐薬品性、低吸水性、電気絶縁性、耐摩耗性などの特長を有す。特に、SMTコネクタでブリスターの問題が発生しにくいという特長があり、電気・電子製品向けに採用を拡大してきた。
スマートフォンやパソコンのコネクタなどの電気・電子用途、LED反射材用途のほか、軽量化ニーズが高まる自動車分野でも冷却系部品のハウジングやギヤなどで採用が拡大している。さらに近年は、車載電装部品でも採用が進んでいる。
グローバルに増大する需要に対応し、安定した供給体制を整えるため、2023年に稼働を開始したタイの新プラントではモノマーからポリマーまでの一貫生産を行っている。タイの新プラント稼働に伴い、ポリマー供給能力はグローバルで従来比約2倍に拡大した。
2025年11月13日


