旭化成が独EAS社とライセンス契約 超イオン伝導性電解液技術

2025年11月06日

ゴムタイムス社

 旭化成は11月4日、ドイツの電池メーカーEAS Batteries社と、同社が開発した超イオン伝導性電解液技術に関するライセンス契約を締結したと発表した。同技術は、EAS社が新たに開発したリン酸鉄(LFP)を正極に⽤いた円筒型の超⾼出⼒リチウムイオン電池に採⽤され、2026年3⽉に販売開始される予定となる。同取り組みは、同社が推進する無形資産を活⽤した新規事業創出の取り組み「TBC(Technologyーvalue Business Creation)」に基づくものとなる。
 両社は、⾼出⼒で⻑寿命の新型リチウムイオン電池を開発した。同電池(容量22Ah)は、同じ容量でも従来の約1・6倍の出⼒を実現している。加速時や重機の⽴ち上げ時など、瞬間的に⼤電⼒が必要な場⾯(2秒間の⾼負荷放電)でも安定して⾼いパワーを発揮する。
 また、電池の寿命(充放電を繰り返せる回数)も優れており、⻑期間の使⽤でも性能が落ちにくくなった。さらに、急速充電・急速放電に対応し、内部抵抗が低いため電池の発熱(エネルギーロス)を抑え、エネルギー効率が向上した。
 同社が⻑年の知⾒と技術⼒を活かして開発した⾼いイオン電導性を持つ電解液により、電池内部の抵抗が低減され、パワーが必要な場⾯でも安定した出⼒を維持する。これにより、船舶、鉄道、建設機械など、過酷な環境で⾼い信頼性が求められる分野での活⽤が期待される。
 同社は、30年以上にわたりリチウムイオン電池の研究開発を続けてきた。2010年から超イオン伝導性電解液の開発を進め、名誉フェローの吉野彰氏がアセトニトリルの有⽤性に着⽬した。2024年6⽉には、超イオン伝導性電解液を⽤いたリチウムイオン電池のコンセプト実証(PoC)に成功している。同技術は、溶媒にアセトニトリルを含むことで既存の電解液では実現困難な⾼いイオン伝導性を有しており、同社独⾃の電解液組成調合技術と電極/電解液の界⾯制御技術により、現⾏LIBの課題である「低温下での出⼒向上」と「⾼温下での耐久性向上」の両⽴を実現した。また、これらは、出⼒向上・急速充電などを可能とし、電動⾃動⾞等における搭載電池の削減や電極の厚膜化による電池の容量アップおよび低コスト化に貢献する。
 同社は2025年4⽉に発表した『中期経営計画2027~Trailblaze Together~』のもと、研究開発においては「変わる未来のはじまりを。」を理念に掲げ、特許やノウハウ、データ、アルゴリズムなどの無形資産を活⽤した「TBC」を推進している。これは同社が保有する豊富な無形資産を多様な形態やライセンスとして提供・活⽤し、収益化を図る取り組みとなる。このアプローチにより、スピード感と資産効率を両⽴した新規事業創出が可能となり、顧客やパートナーに最⼤限の価値を提供する。こうしたライセンス活⽤によるビジネスを、2025〜2027年度で10件以上⽣み出し、2030年頃までの累積利益貢献で100億円以上を⽬指している。

超⾼出⼒リチウムイオン電池

超⾼出⼒リチウムイオン電池

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