出光興産、初期ミッションを達成 宇宙用CIGS太陽電池の宇宙実証

2025年10月23日

ゴムタイムス社

 出光興産は10月20日、同社が開発する宇宙用CIGS太陽電池が搭載された超小型衛星「BOTAN」が、2025年10月10日(日本時間)に国際宇宙ステーション(ISS)から放出され、予定されていた初期ミッションを達成したことを発表した。初期ミッションの一つとして、同社が開発する宇宙用CIGS太陽電池の宇宙実証が行われ、宇宙空間において「BOTAN」へ電力の供給ができていることが確認された。「BOTAN」は1辺10cmの立方体サイズ・約1kgの「キューブサット」と呼ばれる超小型衛星で、千葉工業大学の学生が「高度技術者育成プログラム」(宇宙産業の基盤を支える高度技術者の育成プログラム)の一環として開発したものである。

 従来の大型衛星と比較し低コストで開発と打ち上げが可能なキューブサットは、大学や企業などによる宇宙開発参入の契機の一つとなっている。また、大規模かつ広範な通信や地球観測を可能にするコンステレーション(複数の人工衛星の連携)の手段としても大きく期待されている。

 「BOTAN」は2023年4月に千葉工大の学部2年生(当時)が開発に着手したキューブサットである。本年9月15日にアメリカ・スペースX社ファルコン9ロケットで打ち上げられ、シグナス補給船にてISSに輸送された。10月10日にISSから放出された後、地上と衛星間の通信が確立された。その後、衛星基本機能の宇宙空間での動作確認を行い、計画していた初期ミッションを達成した。

 世界の宇宙産業が拡大する中、日本でも旧来の宇宙企業に留まらず、多くのベンチャー企業が宇宙ビジネスのアイデアを提案し活動を開始している。新たなビジネスアイデアを実現するために不可欠な技術者が不足しているという課題認識のもと、千葉工大では確実に実現できる衛星づくりを可能とする技術者を育成するために、2021年4月より「高度技術者育成プログラム」を行っている。「BOTAN」は本プログラムのもと開発された超小型衛星の4機目で、同社が開発する宇宙用CIGS太陽電池は非常に高い放射線耐性を持つ点が評価され、搭載に至った。

 同社は本実証を通し、宇宙用CIGS太陽電池セルの宇宙空間における特性の確認と発電の安定性の検証を行う。また、この検証結果を踏まえながら、宇宙用CIGS太陽電池の市場参入に向けた開発を加速し、持続可能な宇宙開発への貢献を目指す。

超小型衛星「BOTAN」の外観(提供:千葉工業大学)

超小型衛星「BOTAN」の外観(提供:千葉工業大学)

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