デンカが韓国スタートアップ企業に出資 放熱フィラー事業を強化

2025年10月20日

ゴムタイムス社

 デンカは10月17日、ペガサス・テック・ベンチャーズと共同で運営するコーポレート・ベンチャー・キャピタルファンドを通じて、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の開発・製造・販売を手がけるスタートアップ企業「Naieel Technology」へ出資することを決定したと発表した。
 BNNTは、窒化ホウ素がチューブ状に巻かれた構造を持つナノ材料となる。機械的強度、熱伝導性、熱安定性、化学的安定性に優れた絶縁体であり、エレクトロニクス分野、半導体分野、航空宇宙分野、医療・バイオ分野など幅広い分野での応用が期待されている。
 Naieel Technology社は、BNNTにおいて高い生産能力を誇る独自の生産技術を有しており、低エネルギー、低コストかつ高純度・高品質での製造を可能とする革新的なプロセス「Thermochemical process」を確立している。
 CEO兼CTOのKim氏は、韓国原子力研究院の主任研究員を務めた経歴を持ち、Naieel Technology社の技術開発および事業展開は、設立当初からKorea Science and Technology Holdingsと連携して進められてきた。なお、Naieel Technology社は、BNNTの高い熱伝導性、優れたリチウムイオン伝導性、そして高耐久性を活かし、各種電子デバイスにおける放熱材料、リチウムイオンバッテリー、エネルギー産業および航空宇宙分野等、幅広い用途での活用を見据えた開発および製造を行っている。
 同社は、近年急速に拡大するAIサーバーや半導体パワーモジュール等の高熱伝導ニーズに対応すべく、Naieel Technology社と共同で熱伝導フィラーの開発に注力している。これらのフィラーは、従来品と比較して、半導体パッケージ材料の熱伝導率を少なくとも20%、場合によっては50%以上向上させることが可能となる。今回の出資を通じて、今後さらに高度な熱対策が求められる次世代放熱材料の実現に向け、BNNTと同社の放熱フィラーとの組み合わせによる共同開発等で連携を図っていく。
 今回の出資は、同社が推進する経営計画「Mission 2030」に基づく新事業創出に向けた取り組みの一環として行うものであり、革新的な素材・技術を持つスタートアップとの連携を通じて、持続可能な社会の実現と新規事業創出を目指すものとなる。
 なお、同社のCVCファンドは2023年に設立され、2030年度までに最大で約1億米ドルの投資を計画している。
 今後も同社は、「化学の力で世界をよりよくするスペシャリストになる」というパーパスのもと、世界に誇れる化学で、人々の暮らしと社会に貢献していく。

BNNT粉末

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BNNTスラリー

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BNNT拡大写真

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