日本ゼオンは10月15日、全社横断でのスマート工場化の推進に向けて、新たにIoT共通基盤を構築し運用を開始したことを発表した。本基盤を通じて、製造拠点および研究施設で蓄積される多様なデータの見える化と有効活用を進め、現場業務の効率向上とデジタル技術のさらなる展開を本格的に推進していく。
同社では、製品の品質を確保しながら生産を最適化・効率化することを目的として、2020年よりデジタル技術を活用したスマート工場化に取り組んでいる。一方で、同社においては安定操業が最大の使命であり、生産に関わるシステム(プラント制御システムおよび周辺の測定・監視システム等)は、他の社内ネットワークとは切り離して独立性を保ち、外部からの不正アクセスを遮断する運用で安全性を高めている。この運用は安全性が担保される代わりに、全社横断での操業データ利活用が進めにくい側面もあり、スマート工場化を進める上での課題となっていた。
この度、この課題を解決し、それぞれの現場で蓄積されてきた操業データを安全な方法で全社的に活用していくため、操業の周辺システムを対象としたIoT共通基盤の構築に着手し、現場のアイデアを迅速に具現化できる体制を整備した。
今回の取組みの特徴は、独立した測定機器等のデバイスから、セルラー通信の閉域ネットワークを経由してクラウド上の共通システムや工場・研究所システムに接続することで、高いセキュリティを保ちながら柔軟かつ迅速なIoTシステムの導入を実現している点である。また、セルラー網のメリットとして、原則として有線LANの敷設工事が不要であり、センサーや分析装置などを簡便に接続できる構成によって、現場主導での設置とスピーディな導入を可能にした。任意の場所にゲートウェイを設置するだけで、社内からはアクセス可能でありながら、外部からはアクセスできない通信環境を実現している。
なお、本基盤の構築にあたっては、IoTプラットフォームを提供するソラコムの支援を受けながら、通信・クラウド技術と専門的なコンサルティングを活用してシステム設計を進めている。
本基盤の導入に先立ち、高岡工場において「設備の動作監視システム」を構築し、PoCを経て2025年5月より本番運用を開始している。これまで工場敷地内での移動を要していた巡回点検業務を大幅に減らすことに成功し、作業負荷が軽減されたほか、リアルタイムデータの収集により、早期の異常発見や予兆検知などの分析が可能になった。
現在、複数の拠点において本基盤を活用したIoTプロジェクトのPoCが進行しており、高い効果が得られた取り組みは全国の製造拠点へ順次展開していくことを計画している。これにより、各拠点に分散していたデータを一元的かつ安全に管理・活用できるようになり、生産性の向上や業務改善が一層加速していくことが期待されている。
