旭化成が医薬品添加剤を提供開始 ヒアルロン酸誘導体「ソナノス」

2025年10月09日

ゴムタイムス社

 旭化成は10月8日、新規医薬品添加剤「ソナノス」(ヒアルロン酸ナノゲル)について、品質保証を伴う有償でのサンプル提供を開始し、供給契約に応じる体制を整えたことを発表した。2027年のGMP製造品提供開始を目指している。
 なお、本製品は、2025年11月に米国テキサス州サンアントニオで開催される医薬品製剤分野の学会「AAPS 2025 PharmSci 360」への出展を予定している。

 同社は、コンフォートライフ事業において、医薬品などに広く使用される添加剤「セオラス」(結晶セルロース)等の製品を提供している。現在、「セオラス」の事業基盤を活かし、新製品「ソナノス」の開発を進めている。

 「ソナノス」は、薬物と混合するだけで、疎水性相互作用により、タンパク質やペプチド、難水溶性の低分子薬物などさまざまな成分を封入することができるヒアルロン酸誘導体である。「ドラッグデリバリーシステム(DDS:薬を体内の必要な場所に、必要な量、タイミングで届ける技術)」に適した基剤として使用できる。

 既存の徐放化技術や血中半減期延長技術に比べ、封入時に有機溶媒を使わないため有機溶媒で活性を失いやすいタンパク質にも適用可能なこと、薬物の化学構造の改変が必要ないことが特長である。また、既存の可溶化剤と比較して、少量で可溶化できること、従来は適用が難しかった成分(難水溶性ペプチドなど)にも適用可能なこと、安全性が高いといった強みがある。

 同社は2020年より、国内外の製薬企業を中心に60件以上の無償サンプル提供を行い、フィージビリティスタディを実施した。現在、その中で挙げられた要望をもとに、バイオ医薬品などの皮下徐放に適した「徐放化グレード ソナノスPG」と、水に溶けにくい有効成分への適用に適した「可溶化グレード ソナノスDS」の2種のグレードで、製薬企業を中心とする幅広い顧客向けに事業開発を加速している。いずれのグレードも、2020年のサンプル提供開始当初のサンプルよりもさらに高濃度の成分の封入が可能になるなど、より使用しやすい設計に改善している。

 このたび、製薬企業などに「ソナノス」を用いた医薬品の非臨床試験や臨床試験への移行を安心して進めてもらえるよう、品質保証付きの有償サンプル提供を開始し、供給契約に応じる体制を整えた。「ソナノス」単独の安全性データの拡充も予定しており、2027年のGMP製造品提供開始を目指している。

 なお、2024年に設立した同社発のスピンアウトベンチャーDiveRadGelでは、「ソナノス」のがんワクチン用途への展開を目指しており、本用途に適した「ワクチングレード ソナノスDV」については、2024年にGMP製造を先行して開始している。

「ソナノス」使用イメージ

「ソナノス」使用イメージ

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