東洋紡は10月7日、大塚化学と共同で、抗体医薬品製造プロセスにおける精製工程向けに正の電荷を帯びた不純物(陽性荷電性物質)の除去性能に優れた「カチオン成分分離膜デバイス」を新たに開発したことを発表した。
抗体医薬品は、特定の抗原に結合する性質の抗体を利用した医薬品である。高い治療効果や副作用の軽減が期待される一方、製造工程においては多段階で複雑な処理が必要なため、生産効率の向上が求められている。抗体医薬品の製造プロセスは、主に細胞を培養して抗体を生産する培養工程と、培養した細胞から抗体を精製・回収する工程に分かれ、後の精製工程が全体の約6割のコストを占めると言われている。
同社と大塚化学はこれまで、抗体医薬品の精製工程向けに、従来のアフィニティカラム方式に比べて作業工程数を4分の1に削減することで大幅な作業時間の短縮を可能にする「アニオン成分分離膜デバイス」や、目詰まりを低減することでスループットを同社従来品の2倍に向上し作業時間を3分の1に削減可能なウイルス除去膜などを開発・展開。抗体医薬品の製造プロセスにおける生産性向上に貢献してきた。
このたび新たに両社が共同開発したのは、大塚化学が持つ荷電性物質を特異的に吸着可能なポリマーを同社の精密な孔径制御技術により中空糸膜化することで、目詰まりの抑制と不純物の吸着性能を両立した「カチオン成分分離膜」と呼ばれる分離膜デバイスである。抗体医薬品は種類によって、分離対象の抗体が負の電荷(アニオン)だけでなく正の電荷(カチオン)を持つ場合があるため、「アニオン成分分離膜」だけでは高精度の分離が困難であった。アニオン成分分離膜デバイスをはじめとする分離膜の開発で培った技術・ノウハウを水平展開することで開発した「カチオン成分分離膜デバイス」は、工程数の削減や作業時間の短縮に寄与するという同じ特長を有す。「カチオン成分分離膜デバイス」を、同社と大塚化学の手がける抗体精製用・中空糸膜デバイス製品「TerpSep」シリーズのラインアップに新たに加えることにより、医薬品の有用物質である抗体とその他の不純物を選り分ける精製工程の分離ニーズに幅広く対応する。

