本田技術研究所は、自動車廃材特有の固体異物を含有したELV由来の廃プラスチック部品から、資源となるプラスチックを選別して抽出する、固体異物分離技術「ケミカルソーティング」を新たに開発した。26年中に、最大処理能力350t年規模のパイロット設備の導入と実証を行い、29年頃の実用化を目指す。
開発した固体異物分離技術は、溶媒で樹脂を溶かして「固体異物」を除去するケミカルソーティングにより、高純度の樹脂を抽出する。一般的に自動車から出る廃プラスチック部品には、インサート金属やゴムホース、パッキンおよび樹脂に含有されるガラス繊維をはじめとする補強材など、プラスチックとは異なる固体異物が含まれている。これまでは、固体異物が付帯した廃プラスチック部品をリサイクルするには、人の手や機械により物理的に選別を行う「フィジカルソーティング」を用いることが一般的だが、分別の工程に伴うコスト上昇などさまざまな課題があった。
ケミカルソーティングにより、これまで80%程度にとどまっていた固体異物分離率が99%以上に改善され、高純度のプラスチックを抽出できるようになった。同技術から抽出された純度99%以上の高純度プラスチックは、メカニカルリサイクル・ケミカルリサイクルなどの再資源化工程を経て、再び自動車用材料として使用する「水平リサイクル」が可能となる。
従来の分離手法は、対象とする異物のサイズごとにフィルターや工程の仕様を最適化する必要があった。廃プラスチック部品には様々な大きさの異物があるが、異物の大きさを予想できないため、フィルターの目を細かく設定する必要があり、直ぐに目詰まりを起こし処理作業が止まっていた。
同社が開発した技術は、
ミリメートルサイズの粗大異物に対しては目詰まりの少ない目の粗いフィルターを用い、マイクロメートルサイズの微小異物に対しては遠心分離機による物理的分離を適用。これにより従来は異物のサイズごとに必要だった除去フィルターの仕様の調整が不要となり、微小異物から粗大異物まで一貫して除去可能とした。 また、メンテナンスやフィルター交換を最小限化し、産業スケールで安定的に運用できる連続プロセスを構築。この2点により、ELV由来廃プラスチックのリサイクルでさまざまなサイズの異物除去に対応できるようになり、リサイクル可能な対象部品が増え、経済合理性と展開性を両立させて実用化につなげた。
2025年09月23日
