出光興産は9月19日、9月中旬に海洋アルカリ化(Ocean Alkalinity Enhancement)を用いて、大気中のCO2除去(Carbon Dioxide Removal)に取り組むスタートアップ企業のVycarbに出資したことを発表した。同社はVycarbへの出資を通じ、OAEに関する知見を獲得し、北米におけるCDR事業モデルの構築を推進する。なお、出資は出光アメリカズホールディングスを通じて行った。
2050年のカーボンニュートラル達成には、CO2排出量の削減にとどまらず、大気中のCO2を回収し除去することが不可欠である。この実現に向けて、大気中のCO2を直接または間接的に取り除くCDRの社会実装が期待されている。CDRの手法は、OAEのほかにDACCS(Direct Air Capture and Carbon Storage、直接空気回収・貯留)や風化促進(岩石などを利用した大気中のCO2除去・貯留)、植林など多岐にわたる。数あるCDRの手法のなかでも、OAEは年間数十億トンの削減・吸収ポテンシャルがあるとされており、世界規模でのCO2削減策として期待されている。
Vycarbは、海水や河川水のCO2の除去および貯留技術の開発を推進しており、特にOAEにおいて高い専門性を有している。VycarbのOAEは、陸上にある小型コンテナ内の独自設備でアルカリ性鉱物と海水や河川水を反応させてCO2を固定化し、炭酸塩・重炭酸塩と水にして海や河川へ放流するというものである。また、一般的にOAEでは、CO2除去量の測定・報告・検証(Measurement,Reporting and Verification、以下「MRV」)が難しいとされているが、Vycarbはリアルタイム計測が可能なセンサー技術を活用することで、高精度なMRVを実現している。
同社は、国内外のスタートアップや関係機関との連携を強化することで、CDRに向けた取り組みを戦略的に推進していく。特にCDRの先進市場である北米においては、技術トレンドの把握と実証機会の拡大に注力し、事業モデルの構築を目指す。


