熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)のグローバルでマーケットリーダー的存在であるドイツ化学メーカーBASFの日本法人であるBASFジャパンは、2024年に創業75周年を迎え、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)「エラストラン」シリーズのさらなる展開に力を注いでいる。中でも無黄変タイプの「エラストランNY(L)シリーズ」(以下NYシリーズ)は、フィルムシートを中心に、自動車部品、ホース・チューブ、ゴルフボールなど多様な分野で活用されており、国内外で高い評価を得ている。
近年では中国系メーカーの台頭により競争が激化しており、同社ではNYシリーズにさらなる付加価値を加えることで差別化を図っている。車体の保護用途に加え、新たな用途開拓を進めることで市場の裾野を広げる取り組みが進行中である。
2025年上半期の国内TPU市場を振り返ると、「米国のトランプ関税の影響が懸念される中でも、自動車分野は比較的堅調に推移し、一般工業分野は前年並みの動きを示した」(中村憲明TPUビジネスマネジメントシニアマネージャー)。一方でコンパウンド分野はやや動きが鈍く、自動車分野がその分を補う形となった。
展示会活動も積極的に展開しており、「人とくるまのテクノロジー展」では横浜と名古屋に出展。グローバルでは、5月に開催された「CHINAPLAS 2025」にて、医療用チューブやコンベヤベルト向けの「エラストランFC(食品接触)グレード」を紹介した。このグレードは既にドイツで展開されているが、日本市場では今期から本格的な導入を計画している。
開発製品の一つとして、伸縮性を向上させたTPUが挙げられる。TPUはもともと伸縮性に優れており、マスク用途などで使用されてきたが、同社ではさらに伸縮性を高めた新グレードの開発中。「すでに一部顧客で採用実績があり、衣料品やアパレル分野への展開が期待されている」(金田恵介TPUR&D統括マネージャー)。同製品はフィルム化やファイバー化も可能であり、ゴム材料の代替としての可能性も広がっているという。
さらに、現在開発中の製品として、中間膜のポリビニルブチラール(PVB)材料をTPUに置き換えた新グレードがある。これは透明度を限りなく高め、ガラスの透明性を維持しつつ、耐光性にも優れた素材。従来のTPUでは難しかった光への耐性を克服し、黄変のない継続使用が可能な製品として、建設関連や高速鉄道、防弾ガラスなどでの使用が期待されており、2026年の日本市場展開を目指す。
そのほか、エレベーターに使用されるトラクションベルト用途としても、TPU製品が中国で成功事例を生み出している。これを日本市場へ横展開することも検討されている。
下半期の見通しについては、トランプ関税の影響など不透明感は残るものの、自動車分野や一般工業分野は安定的に推移し、全体としては前年並みを見込んでいる。TPUの多用途展開と技術革新を武器に、同社は今後も市場のニーズに応え続けていく構えだ。

エラストラン開発品 無黄変高透明グレード
