エボニックインダストリーズは9月4日、「Next Markets Program(ネクスト・マーケッツ・プログラム)」を始動し、さらなる成長を推進することを発表した。本プログラムは、同社の中核事業と密接に関連する新たな市場の開拓を目指している。既存の技術や製品に関する組織全体の専門知識を結集することで、新興市場における地位を確立し、顧客へ包括的なソリューションを提供する。
取締役兼カスタム・ソリューションの責任者を務めるローレン・ケルセン氏は、「地政学的・社会的な変化が急速に進む中、市場環境が変化し、新たな顧客ニーズが生まれている。こうした変化を早期に捉え、適切なソリューションを提供したいと考えている。そのために立ち上げるのがNext Markets Programである。複雑なバリューチェーンから新たな切り口を見出し、成長機会を捉えることを目指す」と述べている。
パトリック・グロックナー氏が本プログラムを主導し、以前、統括していたグローバル循環型経済プログラムは、新たな主導体制のもとで継続される。グロックナー氏は、「Next Markets Programは、幅広い市場と顧客セグメントにおいてプレゼンスをもつという、エボニックの中核的な強みを基盤としている。このネットワークを活用し、当社の製品と技術を専門家の部門横断的な連携と組み合わせることで、新たな顧客ニーズに対して迅速かつ革新的なソリューションを提供する」と述べている。
初期の重点分野としては、循環型パッケージ、プラスチックリサイクル、防衛・航空宇宙などを設定している。「これらの分野では変化が急速に進んでおり、革新的なソリューションが強く求められている」とグロックナー氏は説明している。
パイロットプロジェクトは既に進行中である。ある部門横断的なチームは循環型経済の一分野として、ポリオレフィンをベースにした混合プラスチック廃棄物から熱分解により高付加価値化学物質を回収する技術を探求している。多くの企業がこうしたプロセスの収率と効率向上を目指しているが、熱分解油には不純物が含まれやすく、貯蔵安定性に欠けるという課題がある。同社の各事業部門で生まれたイノベーションは、これらの課題に対応しており、汚染物質の除去、貯蔵安定性の向上、流動性の確保などを実現している。このようなソリューションをパッケージ化しパートナーシップを構築して新たなビジネス機会を創出することが、本プログラムの重要な使命である。
また、自動車製造に使用される塗装済みプラスチック部品はリサイクルが困難である。同社は、ドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)の資金提供を受けたBMWとのコンソーシアムプロジェクトにおいて、業界および学術界の主要パートナーと連携し、この課題をはじめとする様々な課題の解決に取り組んだ。同社の技術により、塗料をプラスチックから迅速かつ効果的に取り除くことが可能となり、ここから得られる再生プラスチックは高品質なため、自動車の新たなアドオン部品などの製造に使用できる。Next Markets Programの専門家チームは現在、このソリューションの商業化とさらなる用途の特定に取り組んでいる。
防衛、航空宇宙、航空分野においても、Next Markets Programが対象とするシステムソリューションへの需要が高まっている。例えば、同社の高機能プラスチック、発泡体、特殊添加剤は、耐熱性や耐久性の向上、軽量化を実現する。本プログラムは、ロケットエンジンの推進剤の分野におけるエボニックの幅広い製品群にもフォーカスしている。
本プログラムのチームは、2025年10月8~15日までドイツ・デュッセルドルフで開催される、プラスチック・ゴム産業の主要国際見本市「K 2025」に参加を予定している。
