ランクセス、着色酸化鉄顔料が採用 3Dプリントのコンクリート彫刻作品

2025年09月04日

ゴムタイムス社

 ランクセスは9月3日、イタリア・ヴェネチアで7月に開催された第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の関連展「Time Space Existence」で展示された、コンクリート彫刻作品「Duality of Skin and Core(表皮と中核の二重性)」に、ランクセスの赤と黒の酸化鉄顔料が採用されたことを発表した。この作品は、アイントホーフェン工科大学建築環境学科のクリスティーナ・ナン助教授と建築家マッティア・ズッコ氏により、建築における新たな試みとして開発されたコンクリート彫刻である。同作品は、モジュラー式柱を用い、同社の顔料とオランダの3Dプリント専門企業Verticoとの協力によって実現した。この作品は、コンクリート3Dプリントにおける新たなデザインの可能性を大きく広げる試みとなった。

 このプロジェクトでは、色彩、コンピューター生成パターン、素材性能をデジタル制御製造プロセスに統合する方法を採用した。これにより、未来の建築における新たな審美的・構造的アプローチへの可能性を見出した。

 「Duality of Skin and Core(表皮と中核の二重性)」は古典的な建築用柱を再解釈した作品である。外装に設けられたスリット状の開口部から内部の色彩が覗いており、これが作品名の由来となっている。従来までは、同様の用途では単一で灰色の審美的要素が主流だった。今回の革新的な設計と製造手法により制作された作品では、コンクリートを用いた3Dプリントに新たな可能性を提示した。この作品は、古代ギリシャ・ローマの柱から着想を得たもので、部品を一括で印刷するのではなく、モジュール式を採用しており、9つのドラム(円筒部)と4つのウィング(翼部)で構成されている。各要素の重量は30キログラム未満である。

 この構造を用いることで輸送を容易にし、さらに柔軟な組み立て・分解・再利用を可能にすることで、部品のライフサイクルを延長する。これは持続可能な建設と循環型設計の原則への重要な貢献となる。

 3Dプリントにおける着色コンクリートの可能性を、デザイン面だけでなく技術面でも確保するため、同社はドレスデン工科大学建築材料研究所などのパートナーと共同で、積層造形条件下における自社顔料の特性研究を進めている。共同調査の一環として、パートナー各社は「バイフェロックス(Bayferrox)」および「カラーサーム(Colortherm)」顔料がコンクリート3Dプリントでどのような挙動を示すかを分析した。結果として、顔料はコンクリートの特性に影響を与えず、同時に高い色彩品質と均一性を実現することが確認された。これにより、これまで困難だったコンクリート3Dプリントにおける多彩な着色表現が可能となった。

「Duality of Skin and Core(表皮と中核の二重性)」

「Duality of Skin and Core(表皮と中核の二重性)」

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