東洋紡は8月6日、独自の膜技術などを応用することで、業界で初めて中分子医薬品の製造プロセスにおける精製工程向けに有機溶媒耐性を持つ分離膜を新たに開発したと発表した。
有機溶媒中の反応・合成で得られる中分子医薬品の、原料合成から分離・精製までの工程を連続して行う「連続生産プロセス」への適用が可能、生産効率の向上に貢献する。
今後、同分離膜・技術を活用し、中分子医薬品の受託研究開発製造(CRDMO)を行うシンクレストと共同で、中分子医薬品の連続精製装置の早期開発に取り組んでいく。
中分子医薬品は、ペプチドや核酸をはじめとする分子量が500~2000程度の化合物を活用した新しい医薬品となる。標的分子への特異性が高いため、低分子医薬品に比べて副作用が少なく、また、抗体医薬品などの高分子医薬品とは異なり化学合成できることから製造コストが抑えられるとされ、次世代の医薬品として注目されている。中分子医薬品の市場は、今後2030年まで年率約10%で拡大すると予測されている。
同社はこのほど、中分子医薬品の製造プロセスにおける精製工程向けに、有機溶媒環境下での高い耐久性と分離性能を実現する業界初の分離膜を開発した。同社独自の高分子変性技術と微細製膜技術により、高精度な分離性と、ジメチルホルムアミド、トルエン、アセトンなど広範な有機溶媒への耐性を実現。高濃度な酸・アルカリに対しても優れた安定性を示すことから、有機溶媒を用いる中分子医薬原液の製造プロセスに組み込むことができる。有機ポリマー系材料から構成される同分離膜は、反応原液に含まれる有効成分と不純物を分子量の差に応じて高精度に分離可能。また、同分離膜を用いて連続精製を実現することにより、合成から精製の工程のギャップを解消するとともに、工程間の処理のタイミングを最適化することにつながるため、品質の安定化や生産性の向上に寄与する。さらに、モジュール化した分離膜を集積することで柔軟にスケーラビリティの向上を図ることが可能となる。
同社は、今後、独自のフロー合成技術を核とし、中分子医薬品の製造および連続生産プロセスの構築を強みとするシンクレストと共同で、高効率な連続精製装置の早期開発に取り組んでいく。また、同社は有機溶媒耐性を有する同分離膜を、中分子医薬品だけでなく、低分子医薬品やファインケミカル製品の分離・精製用途などさまざまな分野へ積極的な展開を図ることにより、化学プロセスの効率化と製品の品質向上を両立する新たな生産ソリューションの提供に貢献していく。
2025年08月08日


