再プラ機能回復研究開発 GSIクレオスが事業開始

2023年12月22日

ゴムタイムス社

 GSIクレオスは12月21日、独⾃構造のカップ積層型カーボンナノチューブ(CSCNT)を⽤いて、⻑期屋外暴露後の使⽤済み⾼機能プラスチックの各種機能を回復させる研究開発事業を開始すると発表した。また本研究開発提案は環境省「令和5年度脱炭素型循環経済システム構築促進事業」のうち、「②プラスチック等のリサイクルプロセス構築及び省CO2化実証事業」に採択され、環境省から3年間の⽀援を受け実施することとなった。
 同社ではCSCNTを⽤いたバージン樹脂の⾼機能化だけでなく、使⽤済みリサイクル樹脂の物性回復を⽬的とした要素研究を⻑年続けてきた。この知⾒を活かし、同研究開発事業では、社会インフラを⽀える最重要部材の⼀つである機能性樹脂を⽤いた電気設備資材(電材)の⻑期暴露後の各種機能回復に取り組み、⼤規模な社会実装を⽬指す。
 また、この研究開発では、国内電材トップメーカーである⼤東電材と、⼤⼿リサイクル事業社の近江物産の協⼒を得て、循環型経済の実現を図っていく。例えば、⼤東電材では電材⽤にカスタマイズされた各種試験法を⽤いて、同社が複合化した再⽣樹脂の評価を実施し、同社にフィードバックする。また近江物産では、劣化した使⽤済み⾼機能樹脂の洗浄・粉砕処理をラボベースで⾏い、同社に提供するだけでなく、将来の処理量増⼤を念頭に置いた処理法の検討も⾏う。
 地球環境への負荷低減の観点から、世界的に使⽤済みプラスチックの再利⽤が求められているが、⻑期にわたり屋外に暴露されたプラスチックは⼒学的物性や各種機能の低下が著しく、その再利⽤は極めて困難とされている。なかでも社会の基礎インフラである電⼒・通信・鉄道・ガスなどの送電網に⽤いられる電材向けの樹脂は、⻑期間にわたる⾼い⼒学的物性と共に、絶縁性・耐電圧性・難燃性などの機能性においても極めて要求性能⽔準が⾼いため、再⽣樹脂製電材の社会実装を進めるためには、⻑期暴露により低下した樹脂の⼒学的物性と各種機能性の回復が必要とされている。
 同社は⻑年にわたりCSCNTを⽤いた複合材の研究開発とその社会実装に成功してきたが、今回、社会的に⾼まるニーズを背景に、極めて⾼難度の技術開発が必要とされる⻑期暴露後の⾼機能樹脂の各種機能回復に取り組むこととした。
 同研究事業は、要求性能の⾼い社会インフラ向けの電材に使⽤された⾼機能樹脂の再⽣を試みると同時に、同電材における再⽣材、再再⽣材の使⽤とその拡⼤という⽔平リサイクルの実現を⽬標としており、出⼝と循環領域を明確にした研究開発事業。
 この研究開発事業終了後には、⼤東電材とそのユーザーである電⼒、通信、鉄道、ガスなど⽇本を代表するインフラ企業と共に国内での⼤規模な実証実験を実施し、2029年を⽬標に社会実装を開始する計画。最終的には、電材向け特殊樹脂製品全量について、2030年代前半を⽬途に再⽣樹脂100%への置き換えを⽬指しており、社会への波及効果は極めて⼤きい開発事業といえる。

カップ積層型カーボンナノチューブ

カップ積層型カーボンナノチューブ

関連キーワード: ·

技術セミナーのご案内

ゴムタイムス主催セミナー